コロナ禍でもできることはある。浦和レッズは、地域に密着しながら地道なホームタウン活動を続けている。
今年3月には学校関係者と連絡を取り合い、地元の北浦和小学校で6年生を対象に武田英寿がオンライン授業を実施した。
昨年からさまざまな学校行事が中止となり、思い出らしい思い出もつくれないまま卒業を迎えようとしていた子供たちへの思いからだった。
クラブのホームタウン担当を務める黒岩美幸さんたちは学校関係者と話し合い、できることを模索した。
「学校のコロナ対策などを聞きつつ、クラブ側からオンラインによる授業を提案させてもらいました」
3月は試合が立て込んでおり、スケジュールを調整するのは簡単ではなかった。それでも、あきらめることはなく、チームの協力を得ながら前向きに話を進めた。学校関係者の期待もひしひしと感じていたからだ。
「地域の希望に応えられるクラブでありたいので」
詳細が決まったのは実施4日前。そして3月11日、なんとかオンライン授業を開くことができた。
レッズの選手代表として登壇した武田は、夢について熱く語った。画面越しでもほとばしる情熱は、しっかり伝わったようだ。
熱のこもった19歳の言葉に胸を打たれた小学生たちからは、武田宛にお礼の手紙が数多く届いた。
<夢を持ちたいと思いました>
<僕も、私も、頑張ります>
<野球にしか興味はなかったのですが、サッカーに興味を持ちました>
小学生たちの思いを直接受け取った本人は、すぐにメッセージ動画という形で、感謝の思いを込めて返信した。小学生たちのもとにそれが送られたのは、卒業式の前日だった。
「子供たちは、自分たちのメッセージが本当に届いたことを知って、すごく喜んでいたようです」
ホームタウン活動がつないだ往復書簡。距離は離れているものの、心は通じ合ったのだろう。初めての試みとなった現役選手によるオンライン授業を通し、できることの可能性は大きく広がった。
すでに5月14日には、また違う小学校で創立記念行事の一つとして、オンライン授業を実施する予定。
「これは継続していくつもりです。チームにも先々の日程まで出してもらっているので、ホームタウン担当としては、この機会を逃してはいけないと思っています」
アイディアは止めどなくあふれてくる。日々、学校関係者たちとコミュニケーションを取りつつ、実現可能な多くのプランを練っている。
「選手たちが外に出られないから断るのではなく、トライしてやってみる。こちらからもどんどん提案していきたいです。地域の人たちと一緒にできることを少しでも増やしたいと思っています。
コロナだから地域とクラブが離れるのではなく、気持ちを近づける取り組みをしていきたい。もちろん、コロナ禍が落ち着けば、実際に近づいて接する機会を増やしたいです。きっといま以上のことができると思います」
熱く語る黒岩さんの隣で静かに頷きながら話を聞いていたホームタウン担当の先輩・森俊之さんは、最後に付け加えてくれた。
「地道な活動が必要なんです。時間はかかりますが、一つひとつ関係性をつくっていきたいと思います」
原点に立ち返り、一歩一歩進んでいる。
(取材/文・杉園昌之)