今月初旬、南アフリカの女性が10人の多胎児を産んだと世界中のメディアが報じた。一度に10人の赤ちゃんが誕生するのは世界新記録だと話題になったが、政府による公式調査により全て狂言だったことがわかったと、英BBCなどが報じている。
5月、南アフリカ共和国ハウテン州で発行されている新聞プレトリア・ニュースは、巨大なお腹をした女性の写真を撮影した。女性の名はゴシアム・シトールさん(37)。6月8日、プレトリア・ニュースは彼女とパートナーのテボホ・ツォテツィさんを情報源として、「7人の男の子と3人の女の子の計10人の赤ちゃんが誕生した」と報じた。だが、新型コロナウイルス感染対策や、ツォテツィさんが病院への立ち入りを許可されなかったことを理由に、生まれているはずの赤ちゃんの写真は掲載されていなかった。
その後、市長が出産を確認したとの情報を受け、国内外のメディアがこの驚くべきニュースを報じた。だがBBCによると、実は市長もシトールさんの親族の話を聞いただけで、赤ちゃんの姿は一度も目にしていなかったという。
地元はお祝いムードに沸き、10人の赤ちゃんのための寄付が殺到。プレトリア・ニュースを発行するメディア企業IOLの会長も、気前よく100万ランド(約780万円)を寄付していた。
しかし、第一報を打ったプレトリア・ニュースが病院名が明かされなかったことが疑惑を呼び、ハウテン州内の病院が次々と「うちには入院していない」とコメントを発表する異様な事態に発展。すると、ツォテツィさんが「シトールは金欲しさにウソをついた」とプレトリア・ニュースに告発。“出産”の1週間後には、ツォテツィさんがシトールさんの失踪を届け出た。ソーシャルワーカーによって発見されたシトールさんは、精神衛生法に基づいて入院措置が取られたという。
Daily Mailは、シトールさんにはここ1年以内に出産はおろか、妊娠の痕跡もなかったと医療関係者によって確認されたと報じている。入院期間は当初の予定よりも延長され、29日までは医師の観察下に置かれるとのことだ。
彼女がなぜウソをついたのか、パートナーがウソだと気づいていなかったのかは、明らかになっていない。