ウェブ上で、得意な分野の能力を活かし「スキルをお金」に変える
クラウドソーシングという、ウェブ上の業務委託仲介サービスが広がったことで、個人でもスキルを活かして稼げる時代になった。では、どのように始めたらいいのか、ビジネスマンにお勧めのポイントとともに、副業の専門家として活躍する中野貴利人氏にうかがった。
個人がスキルで容易に稼げる時代に!
近年話題の「クラウドソーシング」は、仕事を発注したい企業と、仕事を受注したい個人をウェブ上でマッチングするシステム。社内の仕事の一部をアウトソーシングするのは一般的ですが、そのアウトソーシング先を個人や小規模な組織にまで広げたスタイルがクラウドソーシングで、それにより、個人がスキルで稼ぐことが容易にできるようになりました。
これはサラリーマンにお勧めの副業の一つ。なぜなら、仕事の受発注、条件交渉、支払いまですべてのやりとりがウェブ上で完結するので、直接会って打ち合わせをするなど、時間的な拘束はほぼありません。個人情報も発注元の企業以外にはバレず、スキマ時間を活かして収入につなげることができるのです。
さらに、報酬はクラウドソーシングサイトが仲介して支払われるので、「仕事をしたのに振り込まれない」「減額された!」などのお金のトラブルの心配は一切なく、リスクはゼロです。
仕事の流れはシンプル。まずクラウドソーシングのサイトでアカウントを作成して、スキルや条件などを公開します。企業から案件を受注したら、期日までに仕事を仕上げ、納品後に報酬と評価を受け取ります。
クラウドソーシングのサイトは数多くありますが、業界最大手とされるのが「クラウドワークス」と「ランサーズ」です。
仕事のカテゴリーは100種以上、大手企業や官公庁、ベンチャーなど多様な企業がクライアントとして並んでいます。それぞれ100万人以上のワーカーを抱える一大市場を形成しており、競争率は上がるものの、他サイトに比べ、案件数が圧倒的に多いので仕事をゲットできる可能性は高まります。
仕事のカテゴリーは、文章ライティング、イラスト、プログラミングを3本柱に、商品企画、音声制作、映像編集、リサーチ、データ入力などさまざまです。
一方、中堅サイトはスキル特化型が多く、ダイエットのノウハウなど個人向けのちょっとしたスキルを販売できる「ココナラ」、秘書や経理などのアシスタント業務を仲介する「キャスタービズ」、簡単な記事作成やデータ入力などハードル低めの仕事が多い「シュフティ」などがあります。
クラウドソーシングはクリエイティブ系が中心ですが、コンサル専用のサイトやキャリア形成の相談・エクセルの困りごとを相談できるサイトなど、仕事のスキルを活かせるものもあります。どのサイトも一長一短ですが、登録は無料なので、最初は気になるサイトに複数登録するのがお勧め。仕事を得られるチャンスが広がります。
まずは自分の得意分野を明確化する
簡単に始められるクラウドソーシングですが、ある程度の副収入として確立するまではそれなりの工夫と努力が必要です。
仕事は、公募、コンペ、指名などさまざまな受注方式がありますが、基本的にはクライアント企業に選ばれなければ仕事は発生しません。自分は副業であっても、仕事を発注している企業には関係ないこと。プロのレベルに到達していると見なされなければ、仕事は舞い込んできません。さらには、並みいるライバルを蹴け散ちらして選ばれる必要があります。そこでクラウドソーシングで稼げるようになるためのコツをご紹介しましょう。
重要なのはプロフィールです。ここでアピールすべきは「専門性」です。サイト上にはスキル、経歴、ポートフォリオなどを掲載することができます。ここは企業側が発注相手を選ぶ際に必ずチェックするところ。漏れなく・丁寧に・わかりやすく書き込んでください。
「なんでもできます!」とアピールするほうが受注できそうですが、ライバルが多い中では埋もれてしまいます。選ばれるためには自分のキャリアや得意なことから専門分野を決めることが先決。たとえば、文章ライティング系なら「医療系企業で15年の勤務実績あり」「FP2級資格保持、投資経験あり」などと特技や経歴、興味分野はどんどん活かしましょう。希少な専門性ほど収入は高まります。また、専門分野を明確にすると、検索にも引っかかりやすく、一つの分野を掘り下げられるのでスキルアップの近道にもなります。
報酬金額を安くしないのが続けるコツ
次に「実績作り」です。仕事が完了すると実績が一つ増えて、発注元から評価されます。成果物のクオリティ、業務の進め方、納期遵守、経験値などを、5段階で評価するサイトが多く、これは、今後、別の企業が仕事を依頼する際の判断材料にもなります。
重要度の高い仕事ほど企業側は慎重になりますから、より報酬が高く、質の高い仕事を受注する確率を高めるには、実績と評価を固めておくことが大きなアドバンテージになります。
とはいっても、最初は誰でも実績ゼロ。初心者ができるだけ早く実績を積み上げていくには、最初は受注単価を安くして、難易度の低い仕事を数多く引き受け、実績と評価を一気に高めていく方法もあります。
ただし、これはあくまで“参入戦略”。いずれ収入の柱にしたいなら、徐々に受注条件をレベルアップしていきましょう。
「半年間は低価格で実績を積む」「案件が20件を超えたら、価格設定を上方修正する」などと下積み期間を決めて、同業のワーカーのプロフィールを参考に定期的に条件を引き上げていくなど自分なりのロードマップを描くことです。
「副業だから、まあいいや」と安い報酬に甘んじていると、結局、自分自身の意欲が削がれ、仕事の質も「安かろう悪かろう」になり、発展性がありません。価格アップとスキルアップはワンセットだと考えて、戦略的に取り組むことをお勧めします。
最後にビジネスマナー。副業だからといってレスポンスを後回しにしたり、絵文字を使って返信したりするのはNG。最終的には成果物で勝負ですが、相手も人ですから、同じレベルならば、ビジネスマナーや常識を共有できる人が選ばれ続けるのは本業の世界と同じです。
クラウドソーシングの登場は、プロとアマの壁を見えにくくしました。これまではプロとして仕事をするには、それなりの経験や人脈、営業力を要しましたが、実力さえあれば参入できる間口が広がったのです。
中野貴利人(なかの・きりと)〔株〕ネットピコ代表取締役
1981年生まれ。千葉工業大学卒業後、JTB情報システムに入社し、ウェブ担当として活躍。その間に副業を展開し、26歳で起業。現在、自身の副業体験を基にした副業情報サイト「フクポン」など17サイトを運営する他、テレビや新聞、雑誌などでも活躍。著書に、『会社の外で月10万円!シッカリ稼ぐ副業・内職入門』(ぱる出版)など。≪取材・構成:麻生泰子≫(『THE21オンライン』2018年7月号より)