総務省統計局は、5年ごとに「住宅・土地統計調査」を実施しています。その中でも特に注目される数字は、日本の空き家の数です。5年ごとですので、2018年時点で前回は2013年10月に調査されましたが、その時点での空き家総数は820万戸、日本の住宅総数に占める割合は13.5%、なんと約7件に1件が空き家の状態ということです。
2018年10月1日付けで、2018年の調査がなされましたので、2019年にはその結果が発表される予定です。その結果を見る前に、2018年6月野村総合研究所から2033年までの空き家の各種予想数値が発表されました。それを見ますと2018年の予想空き家数は、1,078万戸、総住宅数に占める空き家の割合は16.9%、これは約6件に1件が空き家となり、さらに2033年には2,167万戸、30.4%となると予想しています。
これは何と約3件に1件が空き家となる計算です。日本全国で見ると、「自宅の両隣のどちらかが空き家になっている」というあまり信じたくない状況となるかもしれません。愛媛県の松山刑務所から脱走した犯人が、尾道市の向島の空き家に潜伏しながら逃走を続けたニュースは記憶に新しいところです。では、もう少し空き家の状況を深堀してみましょう。
空き家の種類
もう一度2013年の「住宅・土地統計調査」に戻りますと、820万戸の空き家の種類がわかります。内訳は下記のとおりです。 ・「賃貸用住宅」約429万戸(52.4%)
・別荘などの「二次的住宅」約41万戸(5.0%)
・新築中古を問わず買い手を待っている「売却用住宅」約31万戸(3.8%)
・「その他の空き家」約318万戸(38.8%)
その他の空き家とは、世帯が長期にわたって不在であったり、取り壊す予定であったりする種類の物件です。問題は、この「その他の空き家」で、いわゆる誰も住まなくなった田舎にある実家などがこの中に分類されます。2008年に調査されたときと比較して空き家は約63万戸増加し、そのうち50万戸約8割が戸建て住宅です。
実家が空き家になった主な理由は、下記の3つです。
・実家の両親が施設に入居、もしくは子供が引き取り同居した
・両親が老後もっと便利な場所に引っ越したため
・両親が死亡したため実家を相続したが、誰も住まない
空き家増加の理由
なぜこのように空き家が多くなっていくのでしょうか。先進国の空き家の状況を見ますと、イギリスは3%、ドイツにいたっては1%前後といった低さです。どうしてこのように日本で空き家が増加したのでしょうか。その背景には、以下の要因が挙げられます。
1.新築着工数が格段に多く、2016年も約96万戸の住宅が着工
・日本人の特性として、中古よりも新築物件を好む傾向がある
2.取り壊し建物の数の少なさ
・違法建築で取り壊しができない
・所有者が解体費用をかけたくない
・更地にすることによる固定資産税が増えることを嫌う
3.中古住宅流通の少なさ
・先進国と比較して、中古住宅を流通させる市場が圧倒的に未成熟
・高度経済成長期に大量に建築された建物の質の低さにより、中古物件の流通が阻害される
4.行政による都市計画の一貫性のなさ
・市街化調整区域や災害の危険が察知できる地域などにも建築ができるような規制緩和が行われている
5.少子高齢化による人口の減少
・当然のことながら、人口減少のスピードに拍車がかかり、特に地方での空き家率が顕著に上昇する
空き家対策の方法
このように増加する一方の空き家をいかに減らしていくかが緊急の課題ということは、疑う余地はないでしょう。行政も以下のような空き家対策を施しています。
1.特措法制定と税制の改定
・撤去に関し、問題のある空き家については、指導、勧告、命令、代執行ができる空き家管理条例が制定できることとなった
・2014年には空き家対策特措法が制定され、条件に当てはまる問題物件を「特定空き家」とし、条例と同じく強制的に代執行まで持っていけることが法律で制定された
・2015年税制改正では、特定空き家に該当する物件については固定資産が低くなる住宅用地特例が解除されることとなった
2.撤去費用の補助
自治体によっては、危険建物の取り壊しに一定額を限度として補助を出すことで撤去を促している
3.空き家バンクの活用促進
自治体が主体となり、貸したい側と借りたい側の空き家の利用促進を行うマッチング事業を行う
4.中古住宅の利用促進
新築偏重から中古住宅の利用促進へ舵を切る必要がある
・長期優良住宅認定制度の導入やインスペクション制度の導入により、中古住宅の質の担保に力を入れる
人口減少と空き家の増加は放置し続けますと日本経済にとって著しい痛手となることは必至です。そのためには、新築偏重から良いものを長く使うという中古偏重へ住宅施策を変えていく必要があります。国交省や自治体が連携を取りながら、空き家問題に積極的に取り組んでもらわなくてはなりません。(提供:アセットONLINE)