国土交通省が4ルートを試算
北陸新幹線でルートが未定である京都~新大阪間について、与党プロジェクトチームの検討委員会は2017年3月7日(火)、JR学研都市線(片町線)の松井山手駅(京都府京田辺市)付近を経由する「南回り」案の採用で大筋合意しました。
検討されたルートは、現在の東海道新幹線・京都~新大阪間より北側を通る「北回り」と、南側を通る「南回り」案です。
国土交通省は検討委員会で、各ルートについての調査結果を提示しています。その内容は次のとおりです。なお、調査対象区間は敦賀~新大阪間であり、このうち敦賀~京都間は小浜市付近経由で試算されています。
(1) 北回り
・建設延長:約140km
・概算建設費:約2兆700億円
・所要時間:約43分
・運賃+料金:5380円
・輸送密度:約4万1100人キロ/日・km
・費用便益比:1.08
(2) 南回り(松井山手駅付近経由)
・建設延長:約143km
・概算建設費:約2兆1000億円
・所要時間:約44分
・運賃+料金:5700円
・輸送密度:約4万400人キロ/日・km
・費用便益比:1.05
(3) 南回り(新田辺駅・京田辺駅付近経由)
・建設延長:約146km
・概算建設費:約2兆2600億円
・所要時間:約44分
・運賃+料金:5700円
・輸送密度:約3万9900人キロ/日・km
・費用便益比:0.97
(4) 南回り(精華・西木津地区経由)
・建設延長:約151km
・概算建設費:約2兆2900億円
・所要時間:約46分
・運賃+料金:5700円
・輸送密度:約3万8600人キロ/日・km
・費用便益比:0.93
所要時間は北陸新幹線の速達列車である「かがやき」で、運賃と料金は現在と同様の体系で、それぞれ算出されています。費用便益比は、新幹線を開通させることで生じる総便益を総費用で割った値です。これが「1」以上だと投資に見合うとされます。いずれのルートも2031年に着工し、完成まで15年かかる想定です。
南回りは2案を追加し検討
当初は(1)の北回りと(4)の南回り(精華・西木津地区経由)で検討されていました。(1)は距離や所要時間が短いという利点があります。また、中間駅は設置されません。一方、(4)は距離が長く、費用便益比が「1」を下回っていました。またこの(4)は奈良県を通過しますが、「奈良県を通るルートは受け入れられない」旨の意見が奈良県から示されたといいます。
京都~新大阪間をめぐっては、運行主体のJR西日本は北回りを、京都府や周辺自治体は南回りをそれぞれ主張。そこで奈良県を通らず、かつ、京田辺市に途中駅を設ける(2)と(3)を追加で設定し、国土交通省が試算をしていました。
新たに調査された(2)の南回り(松井山手駅付近経由)は、(1)の北回りと比べ約3km長いものの、所要時間はプラス約30秒にとどまります。また、JR学研都市線(片町線)と接続する中間駅が設置されることで、関西文化学術研究都市(学研都市)や京都府南部へのアクセスが改善。「地域の街づくり、産業立地等が進む可能性がある」(国土交通省)とされています。今回の検討では、この(2)が選ばれた形です。
検討委員会は今後、JR西日本や京都府などから意見を聞き、3月15日(水)に与党案をまとめる見通しです。