車両の「寝床」を小さくして建設
2018年12月、山手線の田町~品川間に設置される新駅(東京都港区)の名称が「高輪ゲートウェイ」に決定。カタカナを含んでいることや、公募された駅名案のなかでは応募件数が少なかったことで、話題になりました。2020年度の暫定開業が予定されています。
工事が進む高輪ゲートウェイ駅(2018年7月、草町義和撮影)。
この駅がある場所は、もともとJR東日本の車両基地でした。いまも車両基地はありますが、その敷地を縮小して東側に寄せ、空いた西側の土地を再開発。高輪ゲートウェイ駅は、おもにこの再開発地区へのアクセス駅として計画されたのです。
ただ、車両基地を縮小すれば、営業終了後に車両を留め置くための線路、つまり「寝床」が減ります。これでは列車をたくさん運転することができません。にも関わらず、どうしてJR東日本は車両基地を縮小したのでしょうか。
そのカギを握るのは「上野東京ライン」。在来線では山手線と京浜東北線の電車しか走っていなかった東京~上野間に線路を増設し、東京駅をターミナルとしている東海道線と、上野駅を発着する宇都宮線・高崎線・常磐線を直通する列車です。
直通運転は国鉄時代に計画。1991(平成3)年に開業した東北新幹線 東京~上野間の高架橋も、将来は新幹線の上に在来線を通す「二重高架」にできる構造で建設されています。しかし、線路の増設は膨大な費用がかかるため、具体化できない状態が続きました。
その一方、東京~上野間の混雑は非常に激しく、山手線 上野→御徒町間の混雑率は1990(平成2)年度の時点で274%。これを抜本的に改善するためには、線路の増設が必要でした。
車両基地を縮小できたワケ
こうして2000(平成12)年には、運輸大臣の諮問機関だった運輸政策審議会が東京圏の鉄道整備計画を取りまとめ、「東京~上野間の線路増設を2015(平成27)年度までに行う」という趣旨の文言を盛り込みました。
営業運行が始まる前の上野東京ラインを走る試運転列車(2014年8月、草町義和撮影)。
これを受ける形で、直通化プロジェクトが本格的に始動。東日本大震災の影響もあって工事は遅れましたが、2015(平成27)年3月に直通運転が始まりました。南北の移動が便利になったほか、東京~上野間の混雑も緩和。山手線 上野→御徒町間の混雑率は、2014(平成26)年度が199%だったのに対し、2015(平成27)年度は163%と、一気に30%以上も下がっています。
しかし、上野東京ラインの効用は、それだけではありません。
直通運転が始まる前、東海道線の車両は田町~品川間の車両基地を「寝床」にしていました。しかし宇都宮線・高崎線・常磐線への直通運転が可能になったことで、東京駅より北にある車両基地も、東海道線の車両の「寝床」として使えるようになったのです。
そこで、東海道線の一部の車両は「寝床」を宇都宮線や高崎線の車両基地に移しました。これにより田町~品川間の車両基地に余裕ができ、再開発用地と高輪ゲートウェイの建設用地を生み出すことが可能になったのです。いってみれば、高輪ゲートウェイ駅の「生みの親」は、上野東京ラインということになるでしょうか。そういえば、上野東京ラインもカタカナを含んでいます。
もっとも、高輪ゲートウェイ駅に停車するのは、山手線と京浜東北線の電車だけ。上野東京ライン(東海道線)の列車は通過します。この駅を育てていくのは、山手線と京浜東北線の電車ということになるでしょう。
【画像】高輪ゲートウェイ駅はこうなる!
高輪ゲートウェイ駅の駅舎内イメージ(画像:JR東日本)。
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