1日の大半を車内で過ごす
JR線の普通列車が5日分乗り放題の「青春18きっぷ」。このきっぷを使って普通列車を乗り継げば、片道1万円以上の運賃がかかるような距離でも安い金額で移動できます。「18きっぷ」を使って遠くに行こうと計画している人も多いでしょう。
「青春18きっぷ」で乗れる普通列車をひたすら乗り継げば1日で東京から青森まで移動できる。写真は羽越本線の普通列車(2017年8月、草町義和撮影)。
たとえば、東京~青森間を「18きっぷ」利用期間の2018年7月28日(土)に移動する場合、東北新幹線「はやぶさ」(東京~新青森間)と奥羽本線の普通列車(新青森~青森間)を乗り継ぐと、所定の運賃、料金の合計は1万7550円(「はやぶさ」は普通車指定席、普通列車は普通車自由席を利用)です。
これに対し、東京駅を早朝の5時1分に出発して京浜東北線、高崎線、上越線、信越本線、白新線、羽越本線、奥羽本線の普通列車を乗り継いでいけば、青森駅にはその日の22時52分に到着。約18時間という長丁場ですが、新幹線利用より約1万5000円安い2370円(「18きっぷ」1日分)で東京~青森間を移動できます。
しかし、普通列車は本来、通勤や通学、買い物など日常の生活で短距離を移動するための列車です。座席なども簡素な造りになっていることが多く、長距離の移動には適していません。これに1日中乗り続けるとなれば、その疲労は新幹線の比ではないでしょう。とはいえ、ちょっとした工夫で疲労をある程度抑えることはできます。
スケジュールに余裕を持たせる
疲れないための工夫で最も重要なのが、座席の確保です。地方のJR線を走る普通列車は利用者が少なく簡単に座れそうに思えますが、実際は利用者数に応じて車両の数も少なくしていることが多く、「18きっぷ」の期間中は混雑します。もし座れなければ、日々の通勤や通学よりも長い時間立ちっぱなしになるかもしれません。そうならないためには、座席を確保しやすいスケジュールを組む必要があります。
利用者が少ない路線の普通列車は編成が短く、写真のように1両で運転されていることも(2015年4月、草町義和撮影)。
たとえば、それぞれの普通列車はできるだけ始発駅から乗るようにしたいところです。始発駅でドアが開いた時点では車内に客はいませんから、途中駅から乗るより座れる確率が高くなります。ただ、ネットの乗り継ぎ検索サイトは列車の始発駅が分かりにくいですから、紙の時刻表で確認した方がいいでしょう。
乗り換え駅では、できるだけ長めに時間を確保するのも手です。乗り換え時間が長くなればなるほど早めにホームで並ぶことができ、席を確保しやすくなります。
座席の構造も疲労に関わる重要な要素です。「18きっぷ」で利用できる普通列車の普通車自由席の場合、通勤電車のような長椅子(ロングシート)か、4人掛けのボックスシートが一般的。なかには2人掛けのクロスシートもあります。
ボックスシートやクロスシートは背もたれがあるため疲れにくく、窓側の席なら外の景色が見やすく、気分転換にもなります。車両によってはテーブルが取り付けられたボックスシートやクロスシートもあり、車内で飲食しやすくなっています。一方、ロングシートは背もたれがないうえに食事が取りにくく、車窓も見づらいですから、「18きっぷ」を使った長距離旅行ではできるだけ避けたいところです。
ボックス、クロスが多いのは地方だが…
利用する普通列車の座席がどうなっているかは、時刻表では基本的に調べることができません。一般的には、大きな都市を走る普通列車はロングシート、地方はボックスシートやクロスシートを設けた車両が多いといえます。
地方のJR線を走る普通列車はボックスシートを設けていることが多い(2017年8月、草町義和撮影)。
もっとも、最近は地方でもロングシートの比率を高めた車両や、全席ロングシートの車両が増えており、ボックスシートやクロスシートに必ず座れるとは言えません。各線で運用されている車両をネット検索などで調べ、その車両にどのような座席が設置されているかを確認した方がいいでしょう。
ちなみに、関東エリアでは自由席のグリーン車を連結した普通列車が多数運転されています。「18きっぷ」とは別にグリーン券を追加購入しなければなりませんが、座席はテーブル付きのリクライニングシートで長距離利用でも疲れにくく、食事も取りやすいという利点があります。
食事やトイレも注意しなければなりません。普通列車は基本的に車内販売がないため、飲食類は出発前か途中の乗り換え駅で購入する必要があります。乗り換え駅で購入することを考えているなら、その駅の売店の有無や販売品目などをあらかじめ調べておいた方がいいかもしれません。
なお、JRの普通列車は東京など大都市圏を走る通勤電車を除き、編成中にトイレが無い列車はほとんどありません。しかし、偶然にもトイレのない列車に遭遇して「万が一」の事態に陥れば、かなり悲惨なことになります。この点においても、途中の乗り換え駅では乗り継ぎ時間を長く確保するのが効果的。基本的には駅のトイレで用を足すようにし、列車のトイレを使うことは考えないスケジュールを組んだ方がいいでしょう。
【写真】充実してきた普通列車のトイレ
近年はバリアフリーの法整備が進んだこともあり、普通列車のトイレも設備が充実してきた(2018年1月、恵 知仁撮影)。