東京~新函館北斗間は実現の見込みだが
いよいよ「4時間の壁」を破ることになるのでしょうか。2018年11月21日(水)に共同通信が配信した記事によると、東北・北海道新幹線の東京~新函館北斗間の最短所要時間(4時間2分)が2018年春のダイヤ改正で短縮され、4時間を切って3時58分になるそうです。
2018年春のダイヤ改正で東京~新函館北斗間を3時間58分で結ぶ見込みとなった東北・北海道新幹線(2011年11月、恵 知仁撮影)。
所要時間が鉄道で4時間以内の区間では、飛行機より鉄道のほうが利用者が多くなる傾向があります。飛行機は速いですが、空港までのアクセスに時間がかかるため、鉄道の所要時間が4時間以内なら飛行機と同等か、鉄道のほうが目的地に早く着ける可能性が高くなるためです。逆に鉄道で4時間以上かかる区間では、空港までのアクセスを含めても飛行機のほうが目的地に早く着けることが多く、飛行機の利用者が多くなる傾向があります。
北海道新幹線は現在、在来線と線路を共用している青函トンネル区間で最高速度を140km/hに制限しています。これは新幹線列車と貨物列車がトンネル内ですれ違う際、風圧でコンテナが荷くずれする可能性を回避するため。この制限を160km/hまで引き上げることで今回、所要時間短縮のめどがついたもので、JR北海道は「4時間切りで利用者の増加につなげたい」(共同通信の記事)と考えているようです。
となれば、全体の移動需要が東京~新函館北斗間より大きい東京~札幌間(現在の鉄道の所要時間は7時間44分)でも「4時間切り」を実現したいところ。ただ、北海道新幹線は2031年春の延伸開業を目指して新函館北斗~札幌間が工事中ですが、現在の計画では東京~札幌間が5時間1分とされており、「4時間切り」は難しいように思えます。
しかし、「4時間切り」が100%不可能かといえば、そうとも言い切れません。
札幌「4時間切り」に必要なこと
1993(平成5)年5月、岩手県と青森県、北海道が主催する「新幹線フォーラム」が開かれ、東北・北海道新幹線の調査研究が報告されました。このとき、東京~札幌間の最短所要時間は3時間57分と設定されています。
北海道新幹線が札幌まで延伸されると、現在の計画では東京~札幌間が約5時間で結ばれる。画像は新幹線開業後の札幌駅のイメージ(画像:国土交通省)。
この所要時間を実現するためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。北海道大学工学部の佐藤馨一教授(交通計画学)が監修した条件では、最高速度を350km/h、表定速度(停車時間を含む始発駅~終着駅間の平均速度)を280km/hとした場合に3時間57分になるとしていました(1997年6月10日付北海道新聞朝刊)。
しかし現在、東北・北海道新幹線を走るE5系電車の「はやぶさ」は最高速度が320km/h。そして実際にこの速度で走っているのは宇都宮~盛岡間だけです。また、盛岡以北の線路は最高速度を260km/hとして設計、建設されているほか、青函トンネルの速度制限もあります。そう簡単には「4時間切り」を実現できそうにありません。
ただ、JR東日本は1993(平成5)年、952、953形試験電車「STAR21」の試験走行で最高速度425km/hを記録。2019年春の完成に向けて製造中のE956形試験電車「ALFA-X」も、試験最高速度の目標は「400km/h程度」としています。
営業運転で350km/hを出すためには車両だけでなく線路も改良しなければなりませんし、その費用の調達も大きな課題です。とはいえ技術的に全く不可能というわけではないでしょう。
ちなみに、JR北海道は2018年6月に示した経営再建案で、東京~札幌間の所要時間を速度向上により4時間半程度に短縮させる方針を盛り込んでいます。
東京~札幌間で「4時間切り」を実現できれば飛行機の利用者が新幹線に移り、JR北海道の経営を改善できるかもしれません。当面は「4時間半程度」を目指すことになりそうですが、将来的にはさらに一歩踏み込んで「4時間切り」を実現できるかどうか、注目されるところです。
【図】新幹線「札幌開業」後の所要時間
北海道新幹線・新函館北斗~札幌間の延伸開業後の各区間の所要時間。東京~札幌間は約5時間だが、少なくとも4時間半程度まで短縮される可能性がある(北海道の公表資料を参考に乗りものニュース編集部作成)。
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