「NH」の「H」は飛行機以外のものを指している!?
空港の案内や航空券の券面において、飛行機の便名はアルファベットと数字の組み合わせで示されています。たとえばANA(全日空)の国内便は「ANA101」、国際線は「NH001」といった要領です。
便名に「NH」と表示されるANA国際線の航空券。1992年のもの(乗りものニュース編集部所蔵)。
このアルファベットの部分は、文字数によりそれぞれ「3レターコード」「2レターコード」と呼ばれ、航空各社それぞれを表すものとして使用されています。ちなみにJALは国内線が「JAL101」、国際線が「JL001」といったように、いずれも社名にちなむもののようです。
ANAの国際線は、なぜ「NH」なのでしょうか。ANAに話を聞きました。
――「NH」は何を意味するのでしょうか?
当社の前身である「日本ヘリコプタ-輸送株式会社」(Nippon Helicopter)の頭文字を取ったものです。
日本ヘリコプタ-輸送は、第二次大戦後、日本の定期航空事業を再び盛んにする目的で、1952(昭和27)年に設立された純民間の航空会社です。ヘリコプタ-2機を所有し、役員12名、社員16名という体制で翌年2月から営業をスタートしました。やがて飛行機による貨物事業、旅客事業にも参入し、1957(昭和32)年12月に社名を全日本空輸(All Nippon Airways)に変更しています。
――国内線の便名では「ANA」が使われていますが、これはなぜでしょうか?
便名の「NH」や「ANA」は、航空の国際機関に登録された「航空会社コード」であり、当社の略称としての「ANA」を用いているわけではありません。航空会社コードは2種類あり、「ANA」は国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)に登録されている3レタ-コ-ドで、国際線の「NH」は、世界の航空会社で構成される業界団体である国際航空運送協会(IATA)に登録されている2レターコ-ドです。国内線では3レターコード、国際線では2レターコードを使うと厳密に決まっているわけではなく、業務の場面に応じてそれぞれが使われます。
歴史を物語る「NH」 「ANA」はいつから?
――「NH」「ANA」とも、いつから使用されているのでしょうか?
2レターコードの「NH」は日本ヘリコプターが、3レターコードの「ANA」は全日本空輸が誕生した当初から業務において使用されています。
航空会社コードとは無関係に「ANA」とする表記も当初から使用されていましたが、かつてのお客様向けの案内などでは「全日空」という略称を使うことが多かったと思います。尾翼に「ANA」と記載する現在の機体の塗装は、1982(昭和57)年12月からのものです。
――2レターコードや3レターコードは、社名が変わったからといって、変更できるものではないのでしょうか?
IATAやICAOに変更の申請をすることは可能かと思いますが、当社ではそのままで現在に至っています。新たに希望するコ-ドがすでに他社に使用されている場合もあり、昨今はアルファベット2文字ではなく、スタ-フライヤ-の「7G」など、数字との組み合わせによる2レタ-コ-ドの航空会社もあります。
――利用者からこの「NH」の意味について、問い合わせなどはあるのでしょうか?
数は多くありませんが、お問い合わせを頂くことはあるようです。
日本ヘリコプター輸送時代の飛行機、デ・ハビラントDH.114「ヘロン」。「白鷺」の愛称があった(画像:ANA)。
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ANAは、今後もこの2レターコード「NH」を「変える予定はない」といいます。
なおJALによると、「JL」の2レターコードは「こちらからIATAに2文字を指定して申請したものではないと認識しています。社名が考慮されたコードが与えられたと思いますが、確かに新興の航空会社では、社名とかけ離れたコードも登場しています」と話します。仮にANAが2レターコードの変更を申請しても、社名に近いコードを得られるとは限らないのかもしれません。
ちなみに日本では、バニラエアの「JW」、ジェットスター・ジャパンの「GK」のように、国内線の便名で2レターコードを使用している航空会社も存在します。