「近くにコンビニなし」のアナウンス、その真意は?
2017年6月21日(水)夜、東海道新幹線の京都~新大阪間で列車に電力を供給する架線の断線が発生し、東海道・山陽新幹線でダイヤが乱れました。
東海道新幹線の岐阜羽島駅。名鉄の羽島線が接続している(2010年2月、恵 知仁撮影)。
岐阜県羽島市の岐阜羽島駅では、23時台になっても普段は通過していく「のぞみ」3列車が停車し、運転再開を待つという事態が発生。乗客から列車内の状況がツイッターなどで次々にアップされましたが、そのなかで「運転再開のめどが立たないためドアを開けます。(編注:岐阜羽島駅で接続している)名鉄線は営業を終了しています。近くにはコンビニもありません」という車内アナウンスが流れたことが、インターネット上で話題になりました。
インターネット上では「絶望的」とも表現された、岐阜羽島駅に関するこの情報。本当に岐阜羽島駅にはコンビニもないのでしょうか。
「確かに駅を出てすぐのところにはレンタカーの事務所や駐車場が多いですが、北口から東方向へ5分も歩けば『セブン-イレブン』があり、西方向に10分程度歩けば『スターバックスコーヒー』などもあります」(羽島市広報係)
とはいえ、列車がいつ運転を再開するかわからない状況。先述のような車内アナウンスが流れたのは理解できます。ちなみに、岐阜羽島駅構内にはJR東海系のコンビニ「ベルマート」がありますが、営業時間は6時15分から21時45分です。
「岐阜羽島は政治駅」はウソ? 「異常」が想定された岐阜羽島駅
この岐阜羽島駅は、「政治家の力によって駅ができた」という噂も存在しました。駅前には岐阜羽島駅の誘致に尽力したとされる地元選出の政治家、大野伴睦夫妻の銅像も建っています。
岐阜羽島駅は1964(昭和39)年、東海道新幹線(東京~新大阪)開業時に新横浜、小田原、熱海、静岡、浜松、豊橋、名古屋、米原、京都の各駅とともに設けられた途中駅のひとつです。開業当時における北口の写真を見ると、「なぜここに新幹線の駅?」という疑問も分からなくはない、静かな風景が広がっています。
そうしたことから、かつて「岐阜羽島は政治駅」という噂がたったのかもしれませんが、実はこの駅、ある役割をもってつくられました。
JR東海の元会長である須田 寛さんの著書『東海道新幹線II』(JTBパブリッシング)によると、「関ケ原付近(編注:岐阜羽島~米原間)の積雪に備えて名古屋、米原の中間に除雪車両の基地、除雪列車(機械)の折返し設備が必要であり、たまたま岐阜県下にも一駅を設ける要請があってそこに駅を併設した」とあります。
また公益財団法人 交通協力会『新幹線50年史』によると、「この駅は関ヶ原の急勾配区間を控えていることから、故障車の留置線を2線設置できるように考慮」とあります
このように、岐阜羽島は関ヶ原の雪や異常時のことも想定しつくられた駅で、東海道新幹線の中間駅としては規模が大きく、4列車までホームに停車可能。大雪や、また今回のような異常時における列車の留置などに対応できます。
ちなみに羽島市の広報係によると、再開発や企業誘致などにより、10年前と比べて岐阜羽島駅の周辺は非常に発展し、飲食店なども増えたそうです。
【写真】岐阜羽島駅前に建つ、駅誘致に尽力した政治家夫妻の銅像
大野伴睦夫妻の銅像。伴睦は右手にタバコを持ち、左手で駅を指さしている(2010年2月、恵 知仁撮影)。