全国に「大学の期日前投票所」 しかし課題も
2019年2月3日(日)に投開票される愛知県知事選において、愛知県豊田市が大型路線バスを活用した「移動期日前投票所(バス型)」を開設する社会実験を行います。
愛知県知事選の期日前投票所として活用される名鉄バスの車両(画像:名鉄バス)。
1月30日(水)から2月1日(金)のあいだ、豊田市内の愛知工業大学、中京大学、愛知学泉大学の構内に日替わりで名鉄の路線バス車両を出張させ、その車両を期日前投票所とします。豊田市によると、路線バス車両を活用した期日前投票所は全国初だそうです。
2016年に選挙権年齢が18歳へ引き下げられたこともあり、大学や高校の構内に期日前投票所を設ける動きが全国的に存在しますが、なぜ今回、豊田市はそれを「バス」にしたのでしょうか。豊田市選挙管理委員会に聞きました。
――これまでも大学の構内に期日前投票所を設けていたのでしょうか?
はい。若者の投票意欲を向上させ、政治への関心を持ってもらうため、まず2016年2月の豊田市長選(当時はまだ20歳以上に選挙権)で中京大学に期日前投票所を開設しました。国政選挙として初めて18歳から投票できるようになった同年7月の参院選では、中京大学に加え愛知学泉大学にも開設しています。いずれも、教室をお借りして投票所としたものです。
――なぜ今回、バスを投票所にするのでしょうか?
それぞれの期日前投票所は、市内在住の有権者なら誰でも利用できるようにしていますが、大学関係者以外がその構内へ入ることには課題も残ります。また、今回はテスト期間中の2月に行われることもあり、教室をお借りするのも難しい状況です。そこで、バスを活用して投票所とすることで課題を解決できるのでは、となりました。
減り続ける投票所数 「移動式」はますます重要に?
――公用車のバンなどを移動式の期日前投票所に使うケースもありますが、バスを使うメリットはどのような点でしょうか?
当初はバンや中型バスの使用を検討していたところ、名鉄バスさんから、昼間に空いている大型の路線バス車両を活用できるとご提案いただきました。乗降扉が車両の前後にあるので、投票者の動線を確保しやすく、受付や名簿の照合、投票用紙への記載まで全て車内で完結できます。スペースに余裕があること、寒さをしのぎやすいのもメリットです。
※ ※ ※
近年、投票所を運営する人手の確保が困難なことなどを背景に、投票所の統廃合が進んでいます。総務省によると、2004(平成16)年の第20回参院選で全国5万3290か所あった投票所は、2017年の第48回衆院選では4万7741か所まで減少。このため、投票所まで遠い地域に、バンなどの公用車を活用した移動式投票所を開設したり、移動が困難な有権者を自宅から投票所へ送迎したりする取り組みが全国で実施されています。
選挙スタッフ用携帯電話やパソコンの充電は、豊田市所有のPHV車からまかなわれる(画像:豊田市)。
実験を踏まえて今後、豊田市は高校や遠隔地などにも、路線バスを活用した移動式投票所を開設していきたいといいます。
「たとえば『献血のバス』(移動式採血車)が学校を巡回することがありますが、それと同じように、『投票のバス』が来るというイメージになれば」(豊田市選挙管理委員会)
今回の社会実験にあたっては、名鉄バスが車両を無償で提供。名鉄バスは、同社の経営方針のひとつである「地域貢献」に合致し、昼間時間帯における空き車両を活用した事業として期待できるとしています。
ちなみに豊田市によると、選挙運営スタッフの携帯電話やパソコンの充電は市所有のPHV車(トヨタ「プリウスPHV」)からまかなわれるといい、特別な費用はかからないそうです。
【画像】「バス投票所」の車内
路線バスを活用した「移動式期日前投票所」の車内レイアウトイメージ(画像:豊田市)。
外部リンク