関空特急「ラピート」の更新も兼ねる?
南海電鉄が新型の特急車両の導入に向け、検討を始めたようです。日本経済新聞は2018年8月16日(木)、「南海電気鉄道は、2031年のなにわ筋線の開通に向けて新たな特急車両を開発する検討に入った」と報じました。
難波~関西空港間を結ぶ南海の特急「ラピート」(2016年10月、草町義和撮影)。
なにわ筋線は、その名の通り大阪市内を南北に通る道路「なにわ筋」の地下に建設される新線で、JR西日本と南海電鉄の列車が乗り入れる計画。整備区間は北梅田~中之島~西本町~JR難波間と西本町~南海新難波~新今宮間のふたつ(駅名は新今宮を除き仮称)で構成されます。
北梅田駅では、JRの関空アクセス特急「はるか」が走るJR東海道本線の貨物支線(梅田貨物線)が接続。将来的には阪急電鉄の十三駅から伸びる新線「なにわ筋連絡線」との接続も考えられています。一方、JR難波駅でJR関西本線(大和路線)に接続して阪和線方面に直通。新今宮駅でも南海線に接続させる計画です。
これにより「はるか」が大阪環状線(西九条)経由からなにわ筋線経由に変わり、新大阪~関西空港間の所要時間が短縮されます。また、南海線の列車は大阪市南部の繁華街・難波だけでなく北部の繁華街・梅田エリアにも乗り入れることが可能に。難波~関西空港間を結ぶ南海の特急「ラピート」も、梅田方面から関西空港まで運行されることになりそうです。
ただ、現在の「ラピート」で使われている50000系特急電車は、1995(平成7)年のデビューから20年以上が経過。なにわ筋線が開業するころにはデビューから36年になるため、これより前に引退の時期を迎えると考えられます。そこで南海は50000系に代わる新型車両として、なにわ筋線の運行にも対応した新型特急の検討に着手したものと思われます。
新型特急の構造やデザインなどの詳細は明らかになっていません。というより「検討に入った」ばかりですから、南海自身も詳細は何も決めていないのではないでしょうか。ただ、新型特急がなにわ筋線での運行に対応するものなら、ほぼ確実に導入されると思われる設備があります。
これが無いと地下を走れない
その設備とは、列車の先頭に設けられる「ドア」です。
かつて京成の成田空港アクセス特急「スカイライナー」で使われていたAE100形。よく見ると先頭の中央部に非常用のドアが設けられている(2004年8月、草町義和撮影)。
なにわ筋線の大半は、なにわ筋を地下トンネルで通り抜ける計画です。地下トンネルを通る鉄道車両は、基本的には編成の両端にドアを設けなければなりません。
これは幅の狭いトンネル内で何らかのトラブルが発生して乗客を避難させる場合、側面のドアから脱出するのが難しいため。先頭部にドアがあれば、車内の通路を通って脱出することができるのです。
実際は先頭部にドアのない鉄道車両が地下トンネルを走るケースもありますが、これらはトンネルの幅を広くして、車体側面のドアからも脱出できるようにしています。ただ、トンネルを大きくすればするほど建設費がかさむため、なにわ筋線も幅の狭いトンネルで建設されるでしょう。
この場合、先頭が砲弾のような形をした流線型の「ラピート」と同じデザインを採用することは、かなり難しいと思われます。通常の車両と同じ形にして中央部にドアを設けるか、あるいは少し緩めのカーブを描いた形状を採用しつつ、その形状にあわせた非常用のドアを設けることになるでしょう。
ちなみに、地下鉄乗り入れに対応した特急車両としては、小田急電鉄が運行している特急ロマンスカー60000形電車「MSE」や、かつて京成電鉄の成田空港アクセス特急「スカイライナー」で使われていたAE100形電車があります。いずれも先頭部に非常用のドアを設置し、「MSE」は東京メトロ千代田線に乗り入れる特急「メトロホームウェイ」などで運行中です。なお、AE100形電車は都営浅草線への乗り入れに対応するためドアを設けましたが、営業運転で都営浅草線に乗り入れたことは一度もありませんでした。
「ラピート」は、その特徴的なデザインから「鉄人」などと呼ばれています。新型特急では、先頭のドアがどのような形で設置されることになるのか、そしてそれが車体のデザインにどう影響するのかも、注目点のひとつになりそうです。
なにわ筋線のルート。JR西日本「はるか」や南海「ラピート」が乗り入れて、大阪市北部と関西空港を結ぶ(国土地理院の地図を加工)。