ドアの「戸袋」は危険!
列車のドアに、「ひらくドアにご注意」などと書かれたステッカーが貼られていることがあります。
東急の車両で見られる「ひらくドアにごちゅういください。」と書かれたドアステッカー(2018年11月、乗りものニュース編集部撮影)。
これは主として、ドアに手や荷物が触れた状態でそれが開くと、ドアと一緒に手や荷物が戸袋(ドアの収納部分)に引き込まれてしまう、という事故を防止するため。戸袋の方向を指し示すピクトグラムや、キャラクターを使ったものなどデザインは様々ですが、その多くは子どもでもわかるよう、ひらがなを多くしたり、ふりがなをふったりしています。
実際に、子どもの事故は少なくないようです。東京都の消費生活部が2017年にまとめた調査結果によると、2015年に東京消防庁管内で手指の「挟まれ事故」により救急搬送された事例のうち、「鉄道車両の戸袋」が要因となったのは2歳児において11人で、「手動ドア」に次ぐ2位。3~5歳児でも11人、6~12歳児でも6人が鉄道車両の戸袋による事故で救急搬送されています。
東急線では、ドア開閉時に乗客の手や荷物が戸袋内に引き込まれた事象が2015年度に311件発生。これを受け、東急電鉄は2016年4月から事故を減らすべく対策に乗り出しました。車内ドア上のデジタルサイネージや、駅のポスター、車内放送などでドア周りへの注意喚起を強化したほか、ある「物理的な対策」(東急電鉄)を実施し、事故を激減させたといいます。
東急の物理的な対策とは?
東急の車両では従来から、ドアのガラス部分にクマの絵とともに「ひらくドアにごちゅういください。」と書かれたステッカーが貼られていました。東急ではこれに加え、さらに「長いステッカー」を貼りつけたのです。
この「長いステッカー」は、「滑りやすい素材」なのがポイント。ドアが開いたときに手や荷物が滑ることで、戸袋へドアだけが引き込まれるよう工夫しています。
このほか東急は、混雑する一部の駅において、列車が到着したあと、「ドアが開きます」というアナウンスでひと呼吸おいてから、ドアを開けるようにしたとのこと。こうした対策により、2015年度に311件あったドア開閉時の戸袋への引き込まれ事故は、2016年度は150件、2017年度には100件まで減ったといいます。
しかし、東急が2018年に導入した最新車両の2020系、6020系電車には、縦長のドアステッカーは貼りつけられていません。ドア全体に滑りやすい素材のパネルを使っているからだそうです。
東急電鉄の一部車両には、ドアの戸袋付近に滑りやすい素材でできた縦長のステッカーが貼られている(2018年11月、乗りものニュース編集部撮影)。
ドア戸袋部付近の縦長ステッカーは、東京メトロ銀座線の1000系電車や、JR南武線を走るE233系電車など、東急以外でも近年導入が増えています。また東急2020系、6020系電車を製造した総合車両製作所(横浜市金沢区)によると、滑りやすい素材のドアパネルは、東急以外の事業者向け車両でも採用されているそうです。
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