特急列車は一定の条件で全額払い戻し
「日本の鉄道は時間に正確」と言われていますが、それでも列車の遅れを完全になくすことはできません。乗車した駅では予定通りの時刻に発車したのに、途中の駅で踏切事故に巻き込まれたり、あるいは大雨による規制で一時的に運転が見合わせられ、目的地には大幅に遅れて到着することもあります。
新幹線を含むJRの特急は2時間以上遅れると特急料金のみ全額払い戻しになる(2009年、恵 知仁撮影)。
これが5分や10分の遅れなら「まあしかたないな」で済むかもしれませんが、数時間の遅れになると、旅先や仕事先でのスケジュールが大幅に狂ってしまうことでしょう。「予定通りの時刻に着かなかったのだから、お金を返して欲しい」と、文句のひとつも言いたくなります。実際、一定の条件がそろえば、お金が一部返ってくることもあります。
JRの場合、どんなに遅れても運賃(乗車券や定期券など)の払い戻しはありません。運賃だけで乗車できる普通列車は、5分遅れようが5時間以上遅れようが、出発駅から到着駅までの運賃は必ず払う必要があります。JRは客から運賃を受け取ることで「目的地まで運ぶ」ことを保証しますが、「目的地までの時間」は保証しないのです。
ただし、特急列車(新幹線含む)や急行列車のように、運賃とは別に特急料金や急行料金を払わなければ乗れない列車は、予定の時刻より2時間以上遅れた場合に限り、特急料金や急行料金が全額払い戻しになります。通常の払い戻しで必要な手数料(約200~300円)もかかりません。
特急や急行は普通列車より速いスピードで走るのが「売り」。特急料金や急行料金も「目的地まで速く運ぶ」ことを約束するための追加料金ですから、大幅に遅れた場合は全額払い戻しになるのです。なお、特急料金や急行料金は全額払い戻しになっても、運賃の払い戻しがないのは普通列車と同じです。
なお、割引きっぷはきっぷによって扱いが異なり、2時間以上遅れても払い戻しにならない場合があります。きっぷの購入時に確認しておいた方がいいでしょう。
その場で払い戻すか、あとで払い戻すか
それでは、実際にJRの特急列車に乗って2時間以上遅れて目的地に到着した場合、どうしたらいいのでしょうか。
払い戻しの手続きは通常、駅の精算窓口やきっぷ売り場で行われます。駅に到着後、遅れた列車のきっぷを窓口で示せば、特急料金は全額返金されます。
ただ、列車が遅れて到着した駅の窓口は、払い戻しを求める客で混雑していることがあります。精算窓口の行列に並んで払い戻しに時間がかかると、遅れがさらに拡大してしまうことになりかねません。
このような場合は、改札口にいる駅員にきっぷを見せて、列車が遅れたことを示す証明をもらっておきましょう。1年以内であれば、JRの駅のきっぷ売り場などで払い戻すことができます。逆に言えば、1年以内に手続きしなければ払い戻しできなくなりますから、早めに払い戻しておいた方がいいでしょう。
ちなみに、新幹線の自動改札機に2時間以上遅れた列車の特急券(指定席)を挿入して改札の外に出ようとすると、改札機は「遅払」と印字して特急券を客に返却します。これが遅延証明になりますから、改札機を通るときは忘れずに回収しましょう。ただし、自由席特急券で改札機を通ると返却しない場合があるため、駅員のいる改札口で遅延証明をもらうのが確実です。
なお、JR東日本の新幹線で利用できるモバイルSuica特急券や、東海道・山陽新幹線の交通系ICカード乗車サービス「スマートEX」などを使った場合、自動改札機で取得した情報を使って自動的に決済用のクレジットカードに返金されます。自分で払い戻しの手続きを行う必要はありません。
【写真】「超特急」と案内された新幹線の行先表示板
1964年に東海道新幹線が開業したころの「超特急ひかり18号」の行先表示板。当時は各駅に止まる「こだま」が特急、おもな駅のみ停車する「ひかり」が超特急と案内され、料金も「ひかり」の方が高かった(2009年1月、恵 知仁撮影)。