全国17か所の高速道路ICで導入実験開始
2018年3月23日(金)から24日(土)にかけて、全国17か所の高速道路ICにて「賢い料金」が一斉にスタートしました。これは、所定の道の駅に立ち寄るのであれば、高速道路を降りても、降りなかったのと同じ料金にするという「一時退出実験」です。
2018年3月24日午前0時より、富津館山道 鋸南保田ICからの「賢い料金」一時退出対象となった道の駅 保田小学校(鈴木ケンイチ撮影)。
狙いは、高速道路の休憩施設不足のカバー。実は全国の高速道路ネットワークには、休憩施設同士の間隔に25km以上ある区間が約100か所もあります。できれば、それを埋めたい。でも、新たなSA/PAを作るのは大変。そこで、すでにある高速道路の外の「道の駅」を活用しようというのが、この実験です。高速道路上に休憩施設のないところは、ICから降りて道の駅へ。その代わり、高速料金は降りなかった時と同じにするのです。
まずは2017年の5月から7月にかけて、群馬県高崎市の高崎玉村スマートIC、愛知県新城市の新城IC、山口県周南市の徳山西ICという3か所で試行が始まり、続いて2018年3月23日から24日にかけ、全国17か所での「賢い料金」がスタート。これで全国20か所において一時退出実験が行われることになりました。
とはいえ、この新サービスは誰にでも利用できるものではありません。クルマにETC2.0を搭載していることが必要となります。ETC2.0はクルマの位置がわかりますので、一時退出したときに道の駅へ立ち寄ったことが確認できるのです。逆に言えば「賢い料金」は、ETC2.0のためのサービスということになるでしょう。
ETC2.0普及につながる? 「ならでは」のサービス
ETC2.0とは、従来あるETCの進化版で、最初のうちは「DSRC」の名で2011(平成23)年にスタートしました。2014年からはさらにサービスを拡大して、ETC2.0と呼ばれることに。
ETC2.0対応カーナビゲーションシステムの一例(鈴木ケンイチ撮影)。
従来あるETCとの大きな違いは、ETC2.0は高速道路上やSA/PAに設置されたITSスポットから通信を行えることです。通信によって新しい情報を得たり、クルマの経路情報を伝えたりすることができるため、新たなサービスが可能になります。
とはいえ、従来のETCと比べるとETC2.0は、価格が1万円ほど割高。また、新サービスも現在のところ情報サービス提供と圏央道の割引程度しかありません。そのため、まだまだ普及には時間がかかりそうな様子です。
そうした現状を改善するETC2.0の新サービスが、今回の「賢い料金」です。ETC2.0のメリットが増えれば、それにあわせて普及も進むというわけです。
また、ETC2.0普及が主眼ですから、国土交通省は旧来のETCでの利用は、「現在は考えていない」といいます。古いETCを使っている人には、ちょっと残念なところですね。ただし、すでにETC2.0を装着しているというのであれば、どしどし利用してほしい新サービスです。
もちろん、高速道路は一定の距離以上を連続して利用した場合、距離あたりの料金が割引きされるので(長距離逓減制)、一時退出利用する前後の距離が長いほうが料金のお得度は高くなります(均一料金区間は変わりません)。短距離での利用など利用区間と車種によっては、料金が変わらないケースもあります。また、立ち寄り時間は1時間以内。さらに、降りた時と同じ方向に乗らないといけません。Uターンすると別料金となります。
実際のメリットは? 富津館山道 鋸南保田ICと道の駅 保田小学校の場合
では、「賢い料金」を使うと、どのような便利なことがあるのでしょうか。
道の駅 保田小学校は、その名のとおり元は廃校となった小学校。野菜などの直売所や飲食店のほか、宿泊施設も備えている(鈴木ケンイチ撮影)。
たとえば東京都市圏の最寄りでいえば富津館山道の鋸南保田IC/「道の駅 保田小学校」があります。富津館山道のアクアライン連絡道より南には、これまで君津PAとハイウェイオアシス「富楽里」の2か所の休憩施設しかありませんでした。君津PAは、自動販売機とトイレしかありませんから、実質のところは、たったのひとつ。休憩施設が数多くあれば、ユーザー側も選択肢が増えるということ。房総への観光にも、より楽しく足を伸ばすことができることになります。
また、より切実な問題は、旧来のふたつの休憩施設にはどちらもガソリンスタンドがないことです。「道の駅 保田小学校」にもありませんが、一時退出であれば、街中のガソリンスタンドを利用することも可能です。その場合は一度、道の駅 保田小学校に立ち寄って、ETC2.0で経路の確認を済ませておけばよいのです。
同じように圏央道 五霞IC最寄りの「道の駅 ごか」も、すぐ裏にガソリンスタンドがあります。さらに、中部横断道 白根ICの「道の駅 しらね」の周りは商業施設が集中しています。
高速道路から気軽に降りることができれば、利便性がさらに高まることは確実です。こうしたサービスが、さらに拡大することを期待したいと思います。
●2018年3月実施 高速道路一時退出実験 対象ICと道の駅(住所は道の駅の所在地)
・八戸道 九戸IC/道の駅 おりつめ(岩手県九戸村)
・東北道 村田IC/道の駅 村田(宮城県村田町)
・磐越道 猪苗代磐梯高原IC/道の駅 猪苗代(福島県猪苗代町)
・関越道 高崎玉村スマートIC/道の駅 玉村宿(群馬県玉村町)
・北陸道 親不知IC/道の駅 親不知ピアパーク(新潟県糸魚川市)
・圏央道 五霞IC/道の駅 ごか(茨城県五霞町)
・富津館山道 鋸南保田IC/道の駅 保田小学校(千葉県鋸南町)
・中部横断道 白根IC/道の駅 しらね(山梨県南アルプス市)
・新東名 新城IC/道の駅 もっくる新城(愛知県新城市)
・名神高速 栗東IC/道の駅 アグリの郷栗東(滋賀県栗東市)
・舞鶴若狭道 小浜IC/道の駅 若狭おばま(福井県小浜市)
・舞鶴若狭道 春日IC/道の駅 丹波おばあちゃんの里(兵庫県丹波市)
・米子道 江府IC/道の駅 奥大山(鳥取県江府町)
・中国道 千代田IC/道の駅 舞ロードIC千代田(広島県北広島町)
・中国道 戸河内IC/道の駅 来夢とごうち(広島県安芸太田町)
・中国道 六日市IC/道の駅 むいかいち温泉(島根県吉賀町)
・山陽道 徳山西IC/道の駅 ソレーネ周南(山口県周南市)
・高知道 新宮IC/道の駅 霧の森(愛媛県四国中央市)
・長崎道 東そのぎIC/道の駅 彼杵の荘(長崎県東彼杵町)
・九州道 えびのIC/道の駅 えびの(宮崎県えびの市)
【グラフ】先行3か所では道の駅以外を目的とした一時退出利用も
2017年9月発表、道の駅 玉村宿、同もっくる新城、同ソレーネ周南における「賢い料金」利用者の一時退出理由。道の駅以外を目的とした利用が3割に及ぶ(画像:国土国交省)。