名古屋ターミナルビルが高層ビルに変身
名古屋駅の高層ビル「JRゲートタワー」が、全面オープンから1年を迎えました。来場者数はこの1年で約3000万人に上り、好調なスタートを切ったといえます。全面オープンの1周年から3日後の2018年4月20日(金)、実際にゲートタワーを訪ねてみました。
JRゲートタワーからは名古屋駅構内を発着する列車が見える(2018年4月20日、草町義和撮影)。
JRゲートタワーは高さ約220m(地上46階・地下6階)の複合高層ビルです。駅ビル「JRセントラルタワーズ」と、名古屋中央郵便局の局舎ビル「JPタワー名古屋」に挟まれた場所にあります。低層階には百貨店の「タカシマヤゲートタワーモール」をはじめとした商業施設や、セントラルタワーズにつながる連絡通路が設置されました。オフィスは高層階の26~44階に設けられています。
かつての名古屋駅の東側は1937(昭和12)年に建設された旧駅舎があり、旧駅舎の北側は百貨店やバスターミナルなどが入る複合ビル「名古屋ターミナルビル」と、郵便局の局舎が並んでいました。このうち名古屋ターミナルビルの跡地に建設されたのが、ゲートタワーです。
旧駅舎は老朽化に伴い建て替えられ、2000(平成12)年に高層棟をふたつ設けたセントラルタワーズが全面オープン。続いて郵便局舎も老朽化のため建て替えられることになりましたが、2006(平成18)年に名古屋市がJR東海に対し「郵政等と協力したまちづくり」を要請したことから、JR東海もオープンから30年以上が経過して近い将来の建て替えが必要になっていた名古屋ターミナルビルを建て替えることにしたのです。
こうして名古屋ターミナルビルが2012(平成24)年までに撤去され、ゲートタワーの工事が本格化。2016年11月からオフィスの入居が始まり、2017年4月17日の全面オープンを迎えました。
まず訪ねたのは高層のオフィス階。オフィスはほぼ満床になっているとのことでしたが、今回は42階にあった空室を見ることができました。窓の外を見てみると、目の前に名古屋の街並みが広がっています。その真下では名古屋駅を発着する新幹線や在来線の電車が小さく見え、まるで鉄道模型のようでした。
「窓の下に見える列車」が目当ての宿泊客も
中層階に入居する「名古屋JRゲートタワーホテル」(18~24階)の客室からも、名古屋駅の構内でうごめく列車の姿が見えます。オフィス階に比べて低い分、視野は狭くなりましたが車両は大きくなりました。
ゲートタワーホテルはオープン当初、夜勤明けのビジネス客などの利用も想定。東海道新幹線で運転されているN700系電車と同じタイプのレール付きカーテンを採用し、外光をほぼ完全に遮断できるようにしました。ところが、ふたを開けてみると宿泊客の3割強はインバウンド需要の増加による訪日外国人とのことで、客室の稼働率も1年間の平均で90.2%と好調です。このほか、子ども連れの客が「トレインビュー」を目当てに泊まることも多いといいます。
最後に百貨店の「タカシマヤゲートタワーモール」(地下1階~地上8階)などが入る商業施設とレストラン街(12~13階)を見て回りました。平日の昼前という時間の割には人が多いように感じられます。全面オープンから1年間のゲートタワー来場客数は約3000万人。タカシマヤゲートタワーモールとジェイアール名古屋タカシマヤ(セントラルタワーズ入居)の2館をあわせた2017年度の売上高は約1600億円で、2016年度の1.2倍になったといいます。
JR東海が2018年4月5日に公表した2017年度の輸送概況によると、名古屋近郊のJR在来線の輸送実績は2016年度に比べ2%増加しました。ゲートタワーのオープンを機に、鉄道を使って名古屋駅を訪ねる人が増えた可能性もありそうです。
ちなみに、地下5~6階には業務用の予備スペースがあり、2027年の開業が予定されているリニア中央新幹線の名古屋駅のスペースとして活用される予定です。ゲートタワーと「リニア名古屋駅」の改札口をどのように結ぶかなどの詳細は決まっていませんが、ゲートタワーで「名古屋みやげ」を買ってから地下深くに下るエスカレーターでリニアの改札口に向かい、東京行きのリニア列車に乗って帰路につくというのが観光客の定番になるかもしれません。
【地図】リニアの真上に建設されたJRゲートタワー
JRゲートタワーの位置。JRセントラルタワーズとJPタワー名古屋の挟まれた敷地に建設された。真下をリニア中央新幹線が通る(画像:ジェイアールセントラルビル)。