「昔の丸ノ内線」と「丸」をデザイン
東京メトロは2018年10月11日(木)、車両基地の中野検車区(東京都中野区)で、丸ノ内線の新型車両「2000系電車」を報道陣に公開しました。同線に新型車両が導入されるのは02系電車以来、約30年ぶりです。
2019年2月にデビューする丸ノ内線の2000系(2018年10月11日、恵 知仁撮影)。
2000系は銀座線に導入された新型車両の1000系電車をベースにしつつ、「昔の丸ノ内線」をほうふつとさせる姿になっているのが特徴です。車体を赤いシートで覆い、白い帯を配置。帯の上には「サインウェーブ」と呼ばれる波模様が描かれました。
丸ノ内線は1954(昭和29)年から1962(昭和37)年にかけて、現在の池袋~大手町~新宿~中野坂上~荻窪間(本線)24.2kmと中野坂上~方南町間(方南町支線)3.2kmが開業。このころ導入された300形電車や500形電車は車体全体を赤く塗り、白い帯とサインウェーブによる装飾が施されました。茶色の鉄道車両が多かった当時としてはひじょうに斬新なデザインで、赤い車体と白い帯、サインウェーブは丸ノ内線の代名詞にもなっていました。
なお、白い帯とサインウェーブの装飾は300形などが窓の下に施されたのに対し、今回公開された2000系は窓の上に設けられました。東京メトロは「ホームドアがある駅でも見えやすいよう、窓の上に配置しました」としています。
このほか、丸ノ内線の「丸」にちなんだデザインも随所に採り入れられました。先頭のガラスは丸みを持たせたものを採用。車両の端には円形の窓(丸窓)を設けました。東京メトロの車両に丸窓が採用されるのは初めてです。車内も「丸」のデザインが採り入れられていて、天井パネルは球面の形状を採用。これにより「開放的な車内空間を演出」したといいます。
2000系の導入に伴い現在の02系(右)は順次引退する(2018年10月11日、恵 知仁撮影)。
東京メトロ車両部設計課長の荻野智久さんは報道公開後の記者会見で「やっぱり丸ノ内線といえば、路線カラーのビビッドな赤い色。これが2000系のウリのひとつです」と話しました。
充電できる時間が短いのにコンセント設置の理由
また、6両全ての車両に車椅子スペースを設置。これとは別にフリースペースも車椅子スペースの反対側に設けられました。フリースペースの壁際には、小物を置けるテーブルや荷物掛け、そして充電用コンセント(1か所につき2口)が設置されているのが大きな特徴です。
フリースペースには充電用コンセントも設置された(2018年10月11日、恵 知仁撮影)。
携帯電話やスマートフォンなど電子端末の普及に伴い、近年は充電用コンセントが鉄道車両の車内に設置されることが増えてきました。しかし、コンセントが設置されている車両の多くは新幹線や在来線の特急、座席指定制の通勤列車など運行距離が比較的長い列車に導入されています。2000系のように運行距離や乗車時間が短くなりやすい地下鉄の専用車両に設置されるのは、日本国内では初めてとみられます。
コンセントの設置は東京メトロの社内でもさまざまな議論があったといいます。荻野課長は取材に対し「全部で23部署くらいが参加する会議を7回くらい実施しました。車両設計者の視点だけでなく、一般ユーザーに近いところからもアイデアをもらおうと考えたからです。そうしたなかで、若い社員を中心に『コンセントを設置した方がいいんじゃないか』という意見が出てきました」と話します。
乗車時間が短い丸ノ内線の列車では充電できる電気量も少ないと思われますが、これについて荻野課長は「『少しでもいいから充電したい』という意見が多くあり、(充電量が)残り数パーセントになったときの緊急用として使っていただくことをイメージしました」としています。
一方で「私たちとしては初めての試みで、試験的な意味合いもあります。お客様同士、譲り合って使っていただければと思います」と話し、営業運行開始後の使用状況によってはコンセントの設置数を変える可能性も示唆しました。
2000系の車内の様子(2018年10月11日、恵 知仁撮影)。
2000系は2019年2月に営業運行を開始する予定。2022年度までに318両(6両×53編成)が製造され、現在使われている6両編成の02系を順次置き換えていきます。一方、方南町支線で使われている3両編成の02系は、いまのところ置き換える計画が立てられていません。
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