数のJR東日本、長さのJR東海・JR西日本
鉄道は基本的にレールにガイドされて走るため、自動車のように自由で臨機応変な進路変更はできません。しかし車両を何両もつなげることにより、少ない乗務員で大量輸送が可能となります。日本の新幹線や通勤電車は現在、何両編成まであるのでしょうか。
新幹線で車両がもっともたくさん連結されている列車は、東北新幹線を走る「はやぶさ」+「こまち」、「やまびこ」+「つばさ」などの17両編成です。これに東海道・山陽新幹線「のぞみ」「ひかり」や上越新幹線「Maxたにがわ」などの16両編成が続きます。
両数では「はやぶさ」+「こまち」17両編成などに次ぐ2位だが、編成長では「鼻の差」で新幹線1位となった東海道・山陽新幹線のN700系16両編成(児山 計撮影)。
ただし、秋田新幹線「こまち」や山形新幹線「つばさ」に使われるE6系、E3系は、東海道・山陽・九州新幹線や東北・北海道・上越・北陸新幹線を走る通常の新幹線車両に比べて、全長が5mほど短いミニ新幹線の車両です。そのため、両数ではなく編成の長さで比べると、東海道・山陽新幹線の16両編成と順位が逆転します。
たとえば「はやぶさ」用のE5系・H5系は10両で253m、「こまち」用のE6系は7両で148.65mですから、合計17両の編成長は約401.65mです。一方、東海道・山陽新幹線のN700系16両編成は中間車14両が25m、先頭車がノーズの関係で少し長く27.35mあり、合計404.7m。つまり3mほどの長さで、N700系がまさに「鼻の差」で上回ります。
新幹線では、編成両数ではJR東日本、編成長ではJR東海・JR西日本とトップを分け合う形になりました。
JR在来線の長編成は首都圏の独壇場
JRの在来線定期旅客列車では首都圏の編成が長く、特急列車では東京~伊豆急下田・修善寺間の「踊り子」号や、普通列車では東海道本線、東北本線(宇都宮線)、高崎線、総武本線、常磐線などの15両編成が最長です。
常磐線快速の15両編成。グリーン車が連結されていない写真の編成では、乗降扉は片側だけで60か所にもなる(児山 計撮影)。
ただしこれは旅客列車に限っての話で、貨物列車であれば東京と大阪を結ぶM250系電車「スーパーレールカーゴ」は16両編成、機関車けん引だとコンテナ車を20両以上連結している列車もあります。
私鉄は意外なところが両数トップ
私鉄も、やはり大きな輸送力を必要とする大都市の事業者が長編成の列車を走らせています。関東の大手私鉄では京成電鉄が最大8両ですが、ほかは京急電鉄の12両、小田急電鉄「ロマンスカー」の11両(7000形「LSE」)を筆頭に、10両編成の列車を多数運行しています。また、関西では近鉄が、関東の主流である20m級車両より少し長い21m級車両で10両編成を組んで走らせています。
編成の長さを比べると、京急電鉄の車両は1両あたり18mで、12両編成の場合、その長さは約216m。近鉄の21m級10両の場合は約207mですので、全長、編成両数とも京急の「二冠」となりそうですが、ここで思わぬ伏兵が現れます。
それは富山県の山中を走る黒部峡谷鉄道。元は黒部川の電源開発のために敷設された資材運搬用の鉄道ですが、現在は、シーズンともなれば観光客で大いににぎわい、ピーク時には単線にもかかわらず1時間に宇奈月発片道3本のトロッコ列車(黒部峡谷鉄道は「トロッコ電車」と案内)が運行されるほどの路線です。
そんな背景から列車の編成も長く、けん引の機関車を除いてもなんと最大13両編成。京急電鉄を1両上回るのです。もっとも、客車の長さは1両あたり7m~7.4mと短く、13両つないでも100mほどにしかなりません。
鉄道車両は使用目的や、ホームの長さなどインフラの制約によって、路線や事業者で大きさに違いが出てきます。したがって、たくさんつながっているからといって必ずしも全長も長いとは限らないのです。
【写真】私鉄の編成両数、もっとも多いのは…?
黒部峡谷鉄道のトロッコ列車は客車が最大13両と、編成両数は大手私鉄顔負け(児山 計撮影)。