道路標識「!」の延長線上?
川崎市内に、「あっ!」とだけ書かれた路面表示が、同じ道路で500m強のあいだに9か所も点在しているところがあります。
川崎市幸区の市道に書かれた「あっ!」の路面表示(2018年8月、中島洋平撮影)。
この表示があるのは川崎市幸区のとある市道です。設置の背景や、その意味するところについて、幸区道路公園センターに聞きました。
――なぜ設置されたのでしょうか?
2017年度にこの道路で、脇の細道から飛び出してきた自転車とクルマによる死亡事故が起こったためです。「あっ!」という表示は多摩区で先行例があり、ドライバーに注意を促すため、警察と協議のうえで導入しました。
――たとえば「あぶない」など、具体的な文言にしなかったのはなぜでしょうか?
「あぶない」は、何が危ないのかという話にもなりますし、このような文字はあまり読まれないこともあります。「あっ!」とだけ示すことで、「何かあるな」と思ってもらうことが狙いです。道路標識でいう「!」(その他の危険)の延長線ともいえるかもしれません。
※ ※ ※
道路の周辺は住宅街となっていますが、幸区道路公園センターによると、この道路はバスも通るうえ、川崎駅から第二京浜方面への抜け道にもなっており、交通量が比較的多いそうです。「カーブがずっと続いて見通しが悪いのですが、たとえばカラー舗装ですべて対策しようとすればコストがかかります」とのこと。
このため、いくつかある脇道の出口には、飛び出しを防止する目的で「自転車ストップ!」と書かれた路面シートを施工したうえで、当該の市道を走るクルマのドライバーにも何か注意喚起ができれば、ということで「あっ!」を設置していったそうです。
大阪にもある「あっ!」
大阪府摂津市にも、同じような路面表示が。こちらは、住宅街の曲がりくねった細い道に2か所設置されています。
「現場は道幅が狭く見通しが悪い箇所で、自転車事故を防止する何らかの啓発を、ということになり、住民の方と協議したうえで2004(平成16)年ころに導入したものです。『あぶない』のように文字が長くなると視認性も悪くなるため、できるだけ短く、効果的な文言が使われたようです」(摂津市道路交通課)
摂津市道路交通課によると、「あっ!」は福岡県などほかの地域でも見られるそうですが、そもそも、なぜこのような表示が局所的に生まれるのでしょうか。
道路標示には、「通称道路標識令」など法令で定められた標示と、これら法令に基づかない「法定外表示」と呼ばれるものがあります。たとえば、一時停止の停止線は法令に基づく指示標示ですが、そこに書かれる「止まれ」の文字は法定外表示です。
川崎市のケースでは、脇道の出口に自転車の飛び出しを防止する路面シートも。右上に「あっ!」が見えている(2018年8月、中島洋平撮影)。
法定外表示は道路標識や標示にかかる交通規制の実効性を高めたり、交通に関する注意喚起を図る目的があります。しかし、その様式はあまり統一化されておらず、「止まれ」の文字ひとつとっても各地で微妙な違いが。「あぶない」などの文言も、「あっ、あぶねー!」といった若者言葉のものや、「あぶなかばい」(福岡県)といった方言を交えたものまで存在します。
これらのほかにも、「あっ!」と目に留まるような表示があるかもしれません。