阪急電車を「ザ・ビートル」で「再現」
阪急電車といえば、「阪急マルーン」とよばれる、あずき色やえんじ色に近い独特の車体色が特徴のひとつです。他社では、金属地がむき出しの車両が増えたり、車体色の統一感が薄れたりするなかで、阪急の電車は基本的にすべて同じ車体色で統一されています。
フォルクスワーゲン宝塚で展示されている、阪急電車仕様の「ザ・ビートル」(画像:フォルクスワーゲン宝塚)。
阪急沿線に店舗を構える「フォルクスワーゲン宝塚」(兵庫県宝塚市)には、まるでその「阪急マルーン」をまとったかのような「ザ・ビートル」が展示されています。聞けば、世界で1台だけという阪急電車仕様の「ザ・ビートル」、なぜつくられたのでしょうか。その背景を同店に聞きました。
――なぜこのようなクルマをつくったのでしょうか?
当店は阪急電鉄所有地に立地しており、日ごろから阪急さんとのつながりが深く、当店の経営母体であるネッツトヨタ兵庫の関係者と、阪急さんとで「何かしたいね」と話していたそうです。そこで、地域にゆかりの深い阪急電車を、フォルクスワーゲンを代表する車種である「ザ・ビートル」で再現することとなりました。
――阪急電車の「阪急マルーン」そのものに見えますが、本物と同じ塗料を使っているのでしょうか?
いえ、阪急電車は塗装ですが、この車体色はカラーシートでラッピングして再現したものです。
――色以外に、電車の要素はありますか?
前部座席のサンバイザーには阪急電車と同じ書体で「宝塚」「特急」と書かれた行先板と種別板を設置しています。車体側面には、シルバーでかたどった「9300」の数字を貼り付けていますが、これは阪急の特急車両である9300系にちなんだものです。また、ヘッドマークの「1910」という数字は、阪急の前身である箕面有馬電気軌道が梅田~宝塚間を開業した1910(明治43)年を表しています。
つり革付き!? インテリアもまるで阪急電車
――インテリアも電車に似せているそうですね。
シートカバーは阪急電車のシートと同じアンゴラヤギの毛を使っており、電車のシート製造元に特注したものです。内張りの随所に電車の内装と同様、マホガニーの木目を採用しているほか、後部座席側のアシストグリップを取り外し、代わりに電車のつり革をつけています。
特急に使われる阪急9300系電車(2013年1月、恵 知仁撮影)。
阪急電車のような「車体番号」も。9300系電車にちなんだもの(画像:フォルクスワーゲン宝塚)。
オリーブ色のシートカバーは実際の阪急電車のシートメーカーに特注したもの(画像:フォルクスワーゲン宝塚)。
――反響はどうでしょうか?
半年間ほど展示していますが、マスコミなどで取り上げられることもあり、このゴールデンウィークには遠方からわざわざお越しになる方もいらっしゃいました。「阪急電車に似ている!」といって見に来るお子さんもいて、展示するだけでも、店に足を運んでいただくきっかけになっていると実感しています。
――実際に走れるのでしょうか? 売るとすればいくらくらいでしょうか?
現状では展示しているだけですが、ナンバープレートを取得し車検も通っており、公道を走ることができます。欲しいという声もありますが、販売は考えておらず、価格もつけていません。
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この阪急電車仕様の「ザ・ビートル」、店員に一声かけたうえで、車内に入ることも可能とのこと。展示の終了時期などは未定ですが、「いずれは代車としてお客様に貸し出すことも予定している」そうです。