セットの「18きっぷ」と1日単位のフリーきっぷ
JR全線を利用できるタイプの企画きっぷのなかでも、とくに有名なのが春、夏、冬の3シーズン限定で発売される「青春18きっぷ」。原則として各シーズン中の普通列車に限り、自由に乗り降りできます。
「青春18きっぷ」は1枚で5日(回)分がセットになっている。1日(回)分ずつ買うことはできない。
このきっぷの発売額は1万1850円で、ひとりが1日自由に乗り降りできる「権利」を5回分セットで販売しています。1日(回)分の金額は、1万1850円÷5回=2370円。たとえば、東京駅から高崎線の深谷駅(埼玉県深谷市)までの76.1kmを1往復(所定の運賃は往復で2640円)だけで元が取れる計算になります。
しかし、これはあくまで“ひとり1日分”と所定の運賃を比べた場合の話。「18きっぷ」は5日(回)分のセット販売ですから、仮に東京~深谷間を1日で1往復したとしても、残り4日(回)分も別の旅行などで使わなければ、結果的に所定の運賃より高くなります。
利用する範囲が限られているのなら、各地で発売されている地域限定の1日フリーきっぷを「18きっぷ」の代わりとして使うという手もあります。「18きっぷ」の1日(回)分より若干高く、利用できる日も土曜、休日に限られていることが多いものの、所定の運賃よりは安く旅行できる場合が多いです。
たとえば、東京~大月間の87.8kmを1日で1往復する場合、関東近郊エリアのJR線が1日自由に乗り降りできる「休日おでかけパス」を使えば2670円。「18きっぷ」の1日(回)分より300円高いですが、それでも所定の往復運賃(2980円)よりは310円安くなります。
「この夏は『18きっぷ』を使って旅行するつもりだけど、スケジュールの都合で5回分を使い切れそうにない」と思ったら、基本的に1日単位で発売されている現地のフリーきっぷを使うことも考えた方がいいでしょう。
「18きっぷ」にはないメリットも
ちなみに、地域限定のフリーきっぷは「18きっぷ」には無いメリットもいくつかあります。
「18きっぷ」は大人、子どもともに同額ですが、フリーきっぷの多くは子ども半額か、あるいは大人用より安い金額で子ども用が発売されています。とくに家族連れで旅行する場合などは、フリーきっぷを使った方が「18きっぷ」より安くなる可能性があります。
また、「18きっぷ」は完全に普通列車専用のきっぷ。特急列車は特急券だけでなく乗車券も購入しなければ乗れません。しかし、「休日おでかけパス」などは特急券を追加で購入すれば特急列車にも乗れます。行程の都合で特急列車にも乗る場合、フリーきっぷを使った方が安くなるかもしれません。
ほかにも、きっぷによってはJR線だけでなく私鉄や第三セクター鉄道なども利用できたり、「18きっぷ」の1日(回)分より若干高いながら有効期間が2日間だったりと、さまざまなメリットがあります。
地域限定のフリーきっぷは使い方によっては「18きっぷ」の代わりになるどころか、「18きっぷ」より安くて使いやすい場合もあります。春、夏、冬の「18きっぷシーズン」でも、すぐに「18きっぷ」に飛びつくのではなく、旅先に応じて利用するきっぷを検討した方がいいでしょう。
2000円台で利用できるフリーきっぷは?
最後に、JR普通列車の普通車自由席を利用できるおもなフリーきっぷのうち、「18きっぷ」の1日(回)分と同じ2000円台で発売されているものを紹介します(2018年6月27日時点)。いずれも利用できる地域は限られていますが、使い方次第で「18きっぷ」より安く旅行することができます。
【北海道】一日散歩きっぷ 2260円(子ども半額)
・フリー区間:札幌近郊や道南、道央、道東の一部のJR線
・特急列車:利用不可(石勝線・新夕張~新得間は区間内相互発着の場合に限り普通車自由席が利用可能)
・利用可能日(2018年度):11月25日までの土曜、休日(1日間有効)
【東北】仙台まるごとパス 2670円(子ども半額)
・フリー区間:東北本線・白石~仙台~松島間や仙山線・仙台~山寺間など。仙台市営地下鉄や市営バス、仙台空港鉄道なども利用可
・特急列車:特急券を追加購入すれば利用可能
・利用可能日:通年(2日間有効)
【関東】休日おでかけパス 2670円(子ども半額)
・フリー区間:東京近郊のJR線(東海道新幹線除く)と東京臨海高速鉄道りんかい線、東京モノレール
・特急列車:特急券を追加購入すれば利用可能
・利用可能日:土曜、休日など指定された日(1日間有効)
【東海】青空フリーパス 2570円(子ども半額)
・フリー区間:名古屋近郊のJR在来線と伊勢鉄道
・特急列車:特急券を追加購入すれば利用可能(寝台列車は不可)
・利用可能日:土曜、休日など指定された日(1日間有効)
【中国・四国】岡山・香川休日おでかけパス 2500円(子ども800円)
・フリー区間:岡山、香川県内のJR在来線
・特急列車:特急券を追加購入すれば利用可能
・利用可能日(2018年度):9月30日までの土曜、休日(1日間有効)
※利用する日の前日まで発売
【四国】四国再発見早トクきっぷ 2060円(子ども半額)
・フリー区間:JR四国全線と土佐くろしお鉄道・窪川~若井間、JR四国バスの路線バス(高速バス除く)
・特急列車:利用不可
・利用可能日:土曜、休日(1日間有効)
※利用する日の前日まで発売
【写真】八高線も乗れる「休日おでかけパス」
JR東日本が発売している「休日おでかけパス」は東京近郊のフリーきっぷ。ディーゼルカーが走る八高線も一部の区間(寄居以南)で乗ることができる(2013年7月、草町義和撮影)。