「通信の拠点」になっていない…?
JR山手線・京浜東北線の田町~品川間で工事が進む新駅(東京都港区)の名称が「高輪ゲートウェイ」と発表(2018年12月)されて以来、カタカナを含む駅名がさまざまな形で話題になっています。高輪ゲートウェイ駅から東へ約3.6kmの場所にある東京テレポート駅(東京都江東区)も、そのうちのひとつです。
りんかい線の東京テレポート駅。同線は埼京線と直通運転している(2015年9月、草町義和撮影)。
東京テレポート駅は、新木場~大崎間を結ぶ東京臨海高速鉄道りんかい線の駅。「お台場」こと、東京湾岸の埋め立て地を開発した東京臨海副都心にあります。いまから20年以上前の1996(平成8)年3月30日に開業しました。
東京都内にあることから、駅名に「東京」が含まれているのは分かります。一方、「テレポート」はテレビ(television)や電話(telephone)など、情報を遠くに届ける通信機器などの接頭辞「tele」に、港湾(port)をつなげた言葉。「通信の拠点」でもいえばいいでしょうか。
しかし、東京テレポート駅そのものに通信の拠点といえるような設備があるわけではありません。それにも関わらず「テレポート」を名乗っているのは、駅というより臨海副都心の開発計画と深い関係があります。
開業が遅れていたら別の名前に?
東京湾の埋め立て地に副都心を建設しようという構想は、1970年代末期に浮上。東京都は1982(昭和57)年に長期計画を取りまとめ、臨海部の埋め立て地に副都心を整備する方針を定めました。
その後、通信衛星を使った情報拠点を設け、テレビ会議やケーブルテレビなど、当時最新の情報通信システムを備えたオフィス都市を整備することが決定。1985(昭和60)年に「東京テレポート構想」がまとめられました。1988(昭和63)年には副都心の名称も「東京テレポートタウン」とすることが決まっています。
つまり、「東京テレポート」とは臨海副都心のこと。小学館『精選版 日本国語大辞典』も、「テレポート」を「情報通信基地の機能を備えた都市」と説明しています。その都市の中心駅ということで、東京テレポート駅と名付けられたわけです。
しかし、臨海副都心はバブル経済の崩壊でオフィス街の整備が進まず、その代わりにアミューズメント施設などが誘致されました。「東京テレポートタウン」という名前も「事業の行き詰まりとともに死語化した」(1996年10月30日付け毎日新聞東京版)といいます。
そこで東京都は、臨海副都心の新しい愛称を一般から募集しました。
こうして東京テレポート駅の開業から10か月後の1997(平成9)年1月、約1万2700件の応募から選ばれた新愛称が「レインボータウン」です。これに先立つ1993(平成5)年には「レインボーブリッジ(東京港連絡橋)」が開通しており、これにちなんだ名前といえます。応募作品のなかで最も多かったのも「レインボータウン」でした。
もし東京テレポート駅が「レインボータウン」の選定以降に開業していたら、駅名も「東京レインボータウン」だったかもしれません。
【写真】臨海副都心に立つガンダム!
臨海副都心はエンタメの街に変わった。写真は東京テレポート駅から徒歩5分の場所で展示されていた「RX78-2 ガンダム」の立像(2012年8月、草町義和撮影)。
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