日本の食堂車黎明期を支える
「日本の鉄道史」において重要な食堂が2019年3月、JR九州 鹿児島本線の門司港駅(北九州市門司区)で復活します。その名は「みかど食堂」です。「日本の鉄道史」という科目があったら、テストに出てもおかしくないでしょう。
「みかど食堂 by NARISAWA」のロゴについて説明するJR九州の青柳社長。「動輪」や、“起点の駅”門司港からスタートする「線路」をイメージ(画像:JR九州)。
1899(明治32)年、日本の鉄道で初の食堂車が、山陽鉄道(現在のJR西日本 山陽本線)の急行列車に連結されます。この時代――いわば「日本の食堂車黎明期」を支えた会社のひとつが「みかど」(名称は時代で変わる)で、同社は駅構内に高級洋食店も展開しました。
本州と九州を結ぶ関門トンネルが昭和10年代に開業するまで、“九州の玄関口”だった門司港駅(当時は門司駅という名前)。同駅では、その2代目駅舎が1914(大正3)年に開業した際に「みかど食堂」がオープン。“九州の玄関口”にある高級洋食店として、テーブルにはフィンガーボール、内装にはシャンデリアという、豪華で贅沢な空間だったそうです。
現在、この門司港駅2代目駅舎では復原工事が進行中。その完成にあわせて「みかど食堂」も来春、時代を超えて“平成最後の年”によみがえるのです。
ちなみに現役の駅舎では、この門司港駅の2代目駅舎とレンガ造りの東京駅だけが、「国の重要文化財」に指定されています。
「斬新だけど懐かしい」メニューは、1200円のアラカルトからコースまで
かつてそれがあった場所と同じ、門司港駅の2階によみがえる新「みかど食堂」は、東京・南青山のレストラン「NARISAWA」のオーナーシェフである成澤由浩さんが監修。「みかど食堂 by NARISAWA」として営業を開始します。成澤さんは、車内でスイーツが楽しめるJR九州の観光列車「或る列車」の監修も務めている人物です。
「みかど食堂 by NARISAWA」は、「地元のお客さまに愛され、門司港のシンボルとして誇れる洋食レストラン」がコンセプト。九州の食材が使用される料理の価格帯は、アラカルトが1200円から、セットが2500円から、コースが4000円からが予定されており、おもなメニューはハンバーグ、ビーフシチュー、ビーフカレー、シーフードカレー、グラタン、オムライス、メンチカツ、アジフライ、ポテトフライ、ナポリタン、ドリア、エビフライ、カキフライ、カニクリームコロッケです。
「ナポリタン」のイメージ(画像:JR九州)。
「ハンバーグ」のイメージ(画像:JR九州)。
セットメニューのイメージ(画像:JR九州)。
幕末から明治以降、日本で発達した「洋食」という料理。「みかど食堂 by NARISAWA」で提供するメニューについて、ただ往時の味を再現するのではなく、先人たちが生み出した「古き良きもの」は守りつつ、半歩でも一歩でも進化したものを目指したいと、成澤シェフは話します。
「(料理について)普通に見えるかもしれませんが、レシピとしては斬新です。ただ、食べたときに『なつかしい、これだよね!』がないと『洋食』ではないので、食べるとそうなるようにしています」(成澤シェフ)
成澤シェフによると、デミグラスソースは「コトコト煮るのが悪いわけではない」そうですが、「みかど食堂 by NARISAWA」では鍋に火をかけず、できるだけ脂分を抜き、野菜をたっぷり使って「とろみ」をつけているそうです。
重文の駅舎、内装も注目 天皇陛下も利用されたかつての貴賓室
国の重要文化財の内部に設けられる「みかど食堂 by NARISAWA」、内装にも注目です。
かつて、格式がありながら最先端だったデザインを再現しつつ、シェフが生み出す「新たな洋食」の魅力に呼応するよう、“ものづくりの街”である地元北九州の技術者による高度な技法を取り入れるなど、「格式」と「新しさ」を合わせ持つ「クラシックモダン」なデザインにしているといいます。
「みかど食堂 by NARISAWA」の内装イメージ(画像:JR九州)。
席数は約50。新しい「みかど食堂 by NARISAWA」では、かつて門司港駅で貴賓室だったところも、個室として使う予定とのこと。JR九州の青柳俊彦社長は「地元の皆さんが自慢できるレストランにしたい」と話します。
営業時間は平日が11時30分から14時30分と、17時30分から21時00分、土休日が11時00分から21時30分の予定です。
【画像】「!!スマリアケ設ノ所茶喫 堂食 場酒」と書かれた「みかど食堂」の絵はがき
かつて門司港駅にあったみかど食堂の絵はがき(画像:JR九州)。
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