消えたキャビンの上のアレ
大型トラックにはかつて、緑色のみっつのランプの装備が義務付けられていました。場所は運転席があるキャビンの上で、みっつが横一列に並んでおり、ひとつ光るときもあれば、ふたつ、みっつと光るときもありました。
あのランプは何を意味していたのでしょうか。国土交通省 自動車局 技術政策課に聞きました。
――大型トラックのキャビンの上にあった、緑色のみっつ連なったランプには、どのような意味があったのでしょうか?
前方から走ってくる大型トラックのスピードを周囲のクルマに知らせ、安全性の注意喚起を行っていました。
――どのようなタイミングで点灯するのでしょうか?
対向車側から見て、右側のランプ、左側のランプ、中間のランプの順で点灯します。ひとつ点灯すると40km/h未満の速度、ふたつで40km/h以上60km/h未満の速度、みっつで60km/h以上を意味しています。
速度表示装置の付いた大型トラック「スーパーグレート 2000」(画像:三菱ふそうトラック・バス)。
――なんという名前でしょうか?
正式名称は「速度表示装置」といいますが、「速度表示灯」と呼ぶこともあります。
――いつごろから装備されていたのでしょうか?
道路運送車両法で点灯義務が規定されたのは、1967(昭和42)年です。大型トラックのみが対象となりました。
――なぜ大型トラックのみなのでしょうか?
点灯義務が規定された1967年当時の、大型トラックによる接触事故の状況を考慮したためだと考えられます。
道路インフラ整備が進み、点灯義務は廃止
――ランプの色が緑色だったのには、なにか理由があるのでしょうか?
橙色のウィンカーや白色のバックランプなど、ほかのランプと識別できるようにしたためだと考えられます。
――最近見かけなくなりましたが、いつごろから無くなったのでしょうか?
道路運送車両の保安基準の一部改正にともない、装備義務は2001(平成13)年に廃止となりました。速度表示装置を「備えなければいけない」から「備えることができる」「備えてもよい」という、義務から任意へと変わりました。
――なぜ保安基準が改正されたのでしょうか?
道路インフラ整備が進んだことで、点灯義務が規定された1967年当時と比べ、事故防止の観点から点灯の効果が薄くなったからです。
トラックメーカー、全車から取り外し済み
速度表示装置の装備義務がなくなったことで、トラックのメーカーはどのような対応をとったのでしょうか。また、どのような影響があったのでしょうか。
日野自動車(日野市日野台)は、「クルマのモデルごとにずれはありましたが、2001年には全車から取り外されました」と話します。いすゞ自動車(品川区南大井)も、「(2001年の)廃止以降、取り外した」といいます。その影響については、両社ともに「明確な影響があったという認識はない」としています。速度表示装置の役割は、すでに終わっていたようです。
なお、速度表示装置の装備義務がなくなったのとほぼ時を同じくして、大型トラックには90km/hで動作するスピードリミッターの装備が義務付けられました。
これについて、国土交通省 自動車局 技術政策課は「大型トラックとの接触事故を想定した『速度表示装置』に対し、『スピードリミッター』は高速道路での事故を想定したもの」としています。
道路インフラの整備にともない、求められる安全対策も変わったことの一例といえるでしょう。
【写真】大型トラック、緑の「回転灯」の意味
写真の緑の灯火は速度表示装置ではなく、緑の回転灯が点灯しているもの。鉄道車両など、とりわけ長大なものを運ぶ際に使用される(2008年8月、恵 知仁撮影)。