九州を『キャッシュレス観光アイランド』に
JR九州と、世界最大の流通総額を持つオンラインモバイルコマースカンパニーの中国・アリババグループ(阿里巴巴集団)が2018年7月23日(月)、戦略的提携を発表。2023年度に、中国から九州へ100万人(うち、アリババグループから50万人)の送客実現を目標とすることが明らかにされました。
発表会では、JR九州の唐池会長(右)から「九州の鍵」がアリババの香山社長に贈られた(2018年7月23日、恵 知仁撮影)。
「中国は1億3000万人という、世界トップの観光客送り出し国になっていますが、日本へはそのうちの6%程度です。フィンランドはいま、中国人であふれています。キャンペーンでこれを作り出したのがアリババグループです。南極でもそうしたキャンペーンが展開され、次は九州でやりましょうとアリババの香山社長から提案を受け、実施することになりました」(JR九州 唐池恒二会長)
「なぜ九州なのかというと『東京都を上回る宿泊規模』があります。2017年における九州7県の日本人宿泊数の合計は、東京都が3908万人泊なのに対し、九州7県は4802万人泊です。中国と変わらないような利便性を提供することで九州を『キャッシュレス観光アイランド』にしていき、九州の活性化に貢献したいと考えています」(アリババ 香山 誠社長)
1日平均で1000万人以上が訪問するアリババグループの中国人向け旅行商品専門の販売プラットフォーム「フリギー(Fliggy)」で、九州の魅力的な観光地や温泉、食、文化を集中的に紹介。そうして効果的に誘客するとともに、中国で6億人以上が日常的に利用する同グループのモバイルおよびオンライン決済プラットフォーム「アリペイ(Alipay)」の利用環境を九州に整備。中国からのさらなる集客と、中国人インバウンド客の九州域内における消費拡大を通じて、九州地域経済の活性化に貢献するとしています。また九州では、比較的若い層の集客を考えているそうです。
中国からの訪問客は少なくないが、その内容に課題がある九州
中国からの訪日客数は736万人で、うち九州へは185万人と25%を占めます。ただし九州へはクルーズ船利用者が多く、それを除くと533万人(日本全国)に対し23万人(九州)。4%程度と低くなっています。つまり、多くが寄港中の一時上陸になってしまっているのが現状です(数字は2017年)。
「クルーズ船の乗客や船会社に聞くと、それほど九州に魅力を感じなかったという方が多く、リピーターの獲得につながっていないようです。ただ九州に住む者にとって、そうしたクルーズ船の乗客に『九州の良さ』を知ってもらえているかは疑問です」(JR九州 唐池恒二会長)
中国からの九州訪問客は少なくないものの、大多数が一時上陸のため九州全体の活性化につながっていないほか、リピーターの獲得にもつながっていない状況で、それを変えていく形です。
訪日中国人客の消費金額が15万円から20万円とされるなか、目標の100万人を達成すれば経済効果は1500億円から2000億円。唐池会長は「九州の良さ」を知ってもらえる商品を作るなどし、「何としてもこのプロジェクトを成功させたい」と話します。
九州各県とアリババのキャラクターも集まり、福岡市内で行われた提携発表会(2018年7月23日、恵 知仁撮影)。
事業スキームは、JR九州が“旅マエ(旅の前)”に「モデルルート提案」「D&S列車(観光列車)などのリソース提供」「九州の旅行商品仕入れ支援」を、“旅ナカ(旅行中)”に「JR九州のグループ会社を含む、地域企業への『アリペイ』導入促進支援」を実施。
そしてアリババが“旅マエ”に「アリババグループのデータテクノロジーを活用した、日本と親和性の高い中国人観光客の発見と送客」「出店者との協働による旅行商品販売」を、“旅ナカ”に「『アリペイ』利用環境整備による決裁利便性強化と、アリペイ加盟店の集客サポート」を実施する、というもの。
具体的な送客イメージは、「フリギー」が出店企業と協働で、九州の観光スポットを結ぶモデルルートを造成し、そのモデルルートに沿ったパッケージ旅行商品や交通チケット、宿泊などの商品を、サイト内でダイレクトに販売する形。利用者は気に入ったモデルルートを参考に、九州の観光路線を自由に組み合わせることで、各自で九州旅行を楽しめるといいます。