「努力義務」じゃダメ 「義務化」へ
埼玉県で2018年4月1日(日)から、県内で使用される自転車について、損害保険への加入が義務化されます。
埼玉県で「自転車保険」の加入が義務化される。写真はイメージ(画像:写真AC)。
県防犯・安全課によると、県外から乗り入れてくる車両も含め、県内で乗られるすべての自転車に、保険加入が義務付けられるといいます。詳しく話を聞きました。
――義務化の対象はどのような自転車なのでしょうか?
対象は、県内で乗られるすべての自転車です。これまでは個人が使用する自転車を対象に、損害保険加入を努力義務としていましたが、2018年4月からは個人はもちろん、事業所が業務で使用するもの、レンタサイクル事業者が貸し出すものも対象になります。県外から乗り入れる車両についても、埼玉県内においては条例の適用を受けますので、加入が義務付けられます。
――未加入の場合はどうなるのでしょうか?
特に罰則はありません。というのは、自転車事故を補償する保険は多岐にわたり、加入者が本人ではなく家族が契約しているケースなどもあります。それらの状況をすべて確認するのは難しいため、未加入に対しての罰則も設けていません。
「自転車保険」すでに入っていることも?
――なぜ「自転車保険」を義務化するのでしょうか?
県内における自転車事故の多さや、保険加入率の低さ、また昨今、自転車事故で高額な賠償請求事例があることからです。埼玉県では2012(平成24)年、京都府に次いで全国で2番目に「自転車保険」加入の努力義務を制定し、5年にわたり運用してきましたが、加入率は未だ45%と半数を下回っています。他府県でも義務化の動きがあることから、一歩踏み込む形で本県でも義務化します。
――加入義務化により、利用者にはどのようなことが生じるでしょうか?
まずもって保険に入ってもらうことが必要になりますが、今回、加入を義務とするのは他人に対して補償する損害保険です。たとえば自動車保険や火災保険などの特約として、自転車事故による傷害も補償するものがあり、それらに加入していても義務を果たせます。まずは、ご自分で加入している保険内容を見直し、自転車事故による傷害を補償する内容があるか、あるいはそれに加入しているかを確認していただきたいです。
また、学校などへは生徒・児童に保険加入の有無を確認することを呼び掛けています。これについても、PTA保険などに付帯するもので全校生徒が対象の保険に加入しているケースがありますが、そうでない学校については、生徒・児童に対してアンケートを行い、未加入者へ学校側から情報提供することを求めていきます。
――保険の種類によって、違いはあるのでしょうか?
お話ししたとおり、自転車事故による人身傷害を補償する保険は多岐にわたりますので一概には言えませんが、たとえば「自転車保険」と名のついた専用の商品は、その補償額や自分に対する補償、あるいは事故時のロードサービスといった要素が手厚いといえるでしょう。
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県は保険加入への確認を広く呼び掛けてはいますが、保険の種類が多岐にわたることからも、罰則は設けられません。兵庫県や大阪府など、すでに「自転車保険」の加入を義務化している府県についても、乗り入れ車両も含めた加入義務と、未加入でも罰則がない点は同様です。
ちなみに埼玉県警の資料によると、県内で2016年に発生した自転車乗用中の交通事故死者数は33人で、全国ワースト2位。県の担当者は事故件数の多さから、保険加入の義務化を積極的に推進しなくてはならないと認識しているそうです。また、自転車事故については、2013(平成25)年に神戸地裁で9521万円もの高額な賠償を命じる判決も出ており、保険加入を促すことで「被害者の救済と加害者の負担軽減を図る」と話します。
埼玉県と同様に、京都府でも2018年4月1日(日)から自転車利用者に対して保険加入が義務化されます。この動きは今後も広がっていくかもしれません。
【表】「自転車保険」と名がつかなくても補償アリ?
「自転車保険」と名の付く商品以外でも、自転車事故による傷害を補償するものがあり、それに加入していてもOK(画像:埼玉県)。