重なり合うように、でも快適?
イギリスでは通勤列車の混雑が激化しているといいます。同国運輸省の調査によると、2015年度における鉄道の旅客人員数は1994年度の2倍以上に上っており、1920年代以降、最も高いレベルに達しているそうです。
クロスシートタイプの「ホライゾン」(画像:PriestmanGoode.)。
こうしたなか、飛行機のシートデザインなどを手掛けるロンドンのデザイン事務所プリーストマン・グード(PriestmanGoode.)が、車内環境を改善する目的で、2種類の鉄道車両用新型シートを2016年10月に発表しました。これにはイギリス鉄道安全基準委員会(RSSB)が出資しています。
ひとつは、2人掛け座席が同一方向に並ぶ、いわゆるクロスシートタイプの「ホライゾン」です。シートの前後間隔は狭く、座面が高くなっており、なかば立ったような姿勢で腰かけます。前席座面の下にフットレストが設けられており、前に座っている人のお尻の下あたりまで足を延ばすことができます。となりの座席とは並列ではなく、前後に少しずれて配置されており、横に座った人の肩がぶつからないようになっています。
クロスシートタイプの「ホライゾン」(画像:PriestmanGoode.)。
クロスシートタイプの「ホライゾン」(画像:PriestmanGoode.)。
クロスシートタイプの「ホライゾン」(画像:PriestmanGoode.)。
それぞれ座席の背面には充電・給電用USBポートがあり、モバイル機器などを置くテーブルなどの設置も想定されているほか、シート背面の下方には荷物をひっかけるためのフックがついています。
5人腰かけられる「ボックスシート」?
もうひとつの新シートは、いわゆるボックスシートタイプの「アイランド・ベイ」です。オフピーク時は、日本の鉄道で見られる4人掛けボックスシートのようになり、窓側に設けられたテーブルも利用することができます。一方、ピーク時はこの座席を跳ね上げることで、ヒップレストのように利用し、さらに窓側のテーブルも跳ね上げて1席とすることができ、ボックス内で5人が腰かけられるというものです。
ボックスシートタイプの「アイランド・ベイ」。座席を跳ね上げた状態(画像:PriestmanGoode.)。
「アイランド・ベイ」4人掛け(画像:PriestmanGoode.)。
「アイランド・ベイ」5人掛け。ボックス外の通路側にも座席が設けられている(画像:PriestmanGoode.)。
シートの背もたれ部分には、「ホライゾン」と同様、充電・給電用USBポートが2基ずつ設けられています。また、たとえば片方の座席のみ跳ね上げてスペースをつくることも可能で、車いすやベビーカー、大きな荷物を持った人なども利用しやすいのだそうです。
RSSBによると、「ホライゾン」では30%ほど、「アイランド・ベイ」では15~20%ほど、一般的な通勤列車と比べて収容力がアップするといいます。
これらのシートは、RSSBによる車内インテリアデザインのコンペティションを経て選ばれました。プリーストマン・グードはシートの開発背景について、「通勤列車の乗客は窮屈な状況に直面しており、そのプレッシャーは今後も続くと予想されています。この大きな問題の解決に長期的な視点で取り組み、利用環境を向上させることが不可欠です」と話します。
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