飛行機は前方より後方のほうが揺れが大きい
飛行機の事前座席予約。どの席を選ぶか迷うことも多いのではないでしょうか。好みは人それぞれですが、国内線におけるボーイング777型機を例にとって、各席のメリットとデメリットを見てみましょう。
国内線で使われているボーイング777型機の座席配置イメージ(乗りものニュース編集部作成)。
まず客室最後方部。ここのデメリットは、降機に時間がかかることと、気流の悪いなかを飛行する際、前方客室よりも揺れが大きいことです。飛行機の重心は、主翼近くにあるメインギア(主脚)付近のため、最後部は重心から一番遠い場所となります。したがって、後ろになるほど揺れが大きくなります。また、最後部にトイレやギャレイ(調理場)があるため人の往来が多く、通路側の席はやや落ち着きません。しかし、窓側は主翼に邪魔されることなく、外の景色が楽しめます。
客室中央は機体の重心周辺のため、揺れが一番少ない場所です。しかし、主翼に付いたエンジンの音がほかより大きく聞こえ、ギアの上げ下げの際にも音や振動が響いてきます。また、主翼によって窓外の景色が遮られてしまうデメリットも。
ドア横の座席は足元が広々していて、立ったり座ったりもしやすく、CA(キャビンアテンダント)と向かい合わせに座れることを好む人もいます。ただし、2009(平成21)年4月1日施行の国土交通省の通達により、ここに座る乗客は緊急脱出時の援助を了承しなければならなくなりました。万が一のときに、CAの指示に従ってほかの乗客を機外に脱出させるなどの役目を負うというわけです。また、荷物を足元に置くことができません。なお、窓側の席については、ドアの下部に緊急時の脱出用シュートが収納されており、内側に膨らんでいるため足元が少し狭くなっています。
客室内の座席は左右方向の通路(ドアが両脇にある通路)ごとに区切られ、それぞれを「コンパートメント」と称します。各コンパートメントの後方に位置する座席は、飲み物などのサービスの順番があとになります。天気が悪いときはベルトサインが点灯しやすく、そうなると機内サービスは中断。後部座席の人はなかなか飲み物のサービスを受けられなくなります。
国内線でより快適な座席はどこか? 国際線エコノミーの場合は?
大型機では到着時、通常は前方左側2カ所のドアから降ります。このふたつのドアには開ける順番があり、先に開くのは客室責任者が担当する最前方のドア。したがって、最前方のドア近くに座っている人のほうが、飛行機から早く降りることができます。
機体中央部にあるのがメインギア(2016年、石津祐介撮影)。
通路側か窓側かは好みになりますが、飛行時間の長い場合、私(宮崎佳代子:元キャビンアテンダント)の知る限りにおいて、旅慣れた人ほど自由度の高い通路側を選ぶ傾向にあります。窓側の席を選ぶ場合、右側にするか左側にするかは見たい景色次第でしょう。
様々な条件を比較してみると、より快適なのは最前方の座席といえるでしょう。機体の揺れが少なく、静かで飲み物のサービスも早く、最初に開く出口にも近いです。ただし、最前列は座席前に壁がある機材があり、その場合は、足の長い人は2列目以降がより快適といえるかもしれません。
また、客室最前方はグレードの高い座席が配置されていることが多いため、普通運賃座席ならばそのすぐ後ろの席で、出口に近い左側がよいといえるでしょう。
国際線もほぼ同じです。ファースト、ビジネス、プレミアムエコノミー、エコノミーと4つにクラス分けされた便では、エコノミークラスは座席が後方になります。この場合は、エコノミークラスの始まるコンパートメントの最後部座席だと、リクライニングを気兼ねなくでき、後ろの人がテーブルを上げ下げしたり、出入りしたりする振動もありません。最後方の客室と比べて揺れも少ないです。中央あたりまでプレミアムエコノミークラスの座席があるため、食事や飲み物のサービスの順番もさほど遅くなりません。
飛行機では離陸前の機体の重量とバランスを計算して座席配分や貨物の位置などが決められます。そのため、離陸前に座席を移動することは基本的に禁止されています。しかし一旦離陸すれば、同じクラス内ならば移動が可能です(できない場合もあり)。好みの席に座れなかったときは、離陸後にCAにリクエストしてみるのも、より快適に過ごすためのひとつの手といえます。
【写真】エアバス最新鋭機のビジネスクラス
エアバスの最新鋭機A350-1000のビジネスクラス。3クラス366席が標準の大型機で、JALが導入を予定(2018年2月、恵 知仁撮影)。