人口減少の一方で、訪日外国人は増加
国土交通省は2018年4月11日(水)、近畿圏で計画されている空港アクセス鉄道路線の整備効果などの試算を発表。なにわ筋連絡線や新大阪連絡線は収支採算性が概ね良好である一方、大阪空港線は採算性向上策を検討する必要があるとの見解を示しました。
新大阪から難波、新今宮にかけて大阪を南北に結ぶなにわ筋線となにわ筋連絡線、新大阪連絡線、西梅田・十三連絡線の位置。新駅名はすべて仮称(画像:国土交通省)。
今回の調査目的について国土交通省は、近畿圏では近年、人口減少が進む一方、訪日外国人客が急増しており、関西空港の利用者も増加するなど状況が変化しているとしており、そんななか協議が進む計画路線について、今後関係者の議論を促進するため、事業構想ごとの需要や収支などを検討・試算したとしています。調査対象路線は次のとおりです。
・なにわ筋連絡線
北梅田(仮称)~十三間約2.5km。なにわ筋線を介して、阪急電鉄の十三駅と関空方面を直結。
・新大阪連絡線
十三~新大阪間約2.1km。阪急沿線~新大阪間や、なにわ筋線・なにわ筋連絡線を介して関空方面~新大阪間のアクセスを改善。
・大阪空港連絡線
曽根~大阪空港(仮称)間約4.0km。阪急宝塚線を介して、梅田方面と伊丹空港を直結。
・西梅田・十三連絡線
西梅田~十三間約2.9km。十三駅と大阪メトロ四つ橋線の西梅田駅を直結。阪急沿線~西梅田地区、大阪都心南部間のアクセスを改善。
なにわ筋線は、JR大阪駅の北側に位置しJR梅田貨物線接続する北梅田と南海本線の新今宮を南北に結ぶ計画の鉄道路線です。途中、西本町(仮称)から分岐してJR難波までを結ぶルートも計画されています。今回の試算は、このなにわ筋線が開業していることが前提です。
北梅田~十三間のなにわ筋連絡線は、建設費が約870億円。同線が整備されると十三~関西空港間は乗り換えなしになり、約14分短縮されます。輸送人員は1日あたりおよそ9.2万人~10.2万人。事業の妥当性を評価するための指標である費用便益比は1.7~1.8です。この指標が1を上回ると、事業は妥当なものと評価されます。黒字転換までには24~31年を要します。
なにわ筋連絡線と新大阪連絡線の同時整備で収支採算性が向上
十三~新大阪間をつなぐ新大阪連絡線は、建設費が約590億円。十三~新大阪間は約11分短縮されます。輸送人員は1日あたりおよそ5.5万人。費用便益比は1.4です。黒字転換まで27年を要します。
なにわ筋連絡線と新大阪連絡線を同時に整備した場合、建設費は約1310億円。費用便益比は1.7~1.9となり、黒字転換までは13~16年に短縮されます。
大阪空港線は、建設費が約700億円。梅田~大阪空港間は約6分短縮されます。輸送人員は1日あたり約2.5万人です。費用便益比は1.4ですが、40年間で黒字転換する可能性が低いことから、採算性向上策の検討が必要と分析されています。
西梅田・十三連絡線は、なにわ筋線・なにわ筋連絡線と一部区間が競合。黒字転換までの年数は18年でなにわ筋連絡線より短いものの、費用便益比は1.3でなにわ筋連絡線を下回ります。
今回の調査にあたっては、国土交通省が「近畿圏における空港アクセスネットワークに関する検討会」(座長:正司健一 神戸大学大学院経営学研究科教授)を2017年7月に設置。また、事業性検討における詳細な条件設定のため、大阪府、大阪市、JR西日本、南海電鉄、阪急電鉄、国土交通省鉄道局・近畿運輸局で構成するワーキンググループも設け、議論を進めていました。
国土交通省は事業化に向けた今後の検討について、沿線自治体が連携して鉄道事業者らと調整を進め、建設事業費の精度向上、整備計画など、構想の検討を深めることが期待されるとしています。
【路線図】伊丹・関空と計画路線の位置関係
伊丹空港、関西空港と、新規計画路線の位置(画像:国土交通省)。