SA・PAを「地域の方にも」 民営化で大きく方針転換
高速道路上のSA・PAは、高速道路の利用者だけを想定しているかといえば、そうではありません。実は近年、一般道からも入れるSA・PAが増加しています。
東北道の長者原SAにある一般道出入口。NEXCO東日本では「ウォークインゲート」と呼称している(画像:NEXCO東日本)。
その呼称はNEXCO3社で異なり、NEXCO東日本は一般道からの出入口に「ウォークインゲート」、NEXCO西日本は「ウェルカムゲート」の愛称を制定し、前者は76か所(2017年11月現在。以下同)、後者は68か所あります。一方、NEXCO中日本では出入口の愛称ではなく、一般道から利用可能なSA・PAそのものを「ぷらっとパーク」と名付けており、管内で実に120か所以上を数えます。
NEXCO中日本管内のSA・PA事業を展開する中日本エクシス(名古屋市中区)東京広報室によると、「ぷらっとパーク」を「できるところから増やしている」といいます。詳しく話を聞きました。
――なぜ「ぷらっとパーク」を増やしているのでしょうか?
SA・PA近隣のお客様に親しみを持ってもらう目的があります。2005(平成17)年に日本道路公団が分割民営化されNEXCO中日本が発足して以降、地域の方にも利用してもらう方針に転換しました。たとえば山間部にあるSA・PAでは、近隣に飲食店がなく、(高速道路を利用しなくても)SA・PAを使えるといい、といった声がありました。
――「ぷらっとパーク」では一般道からの利用者用ゲートや駐車場を新設しているのでしょうか?
近年は、アプローチ道路や専用の駐車場を設置することが主流ですが、土地の問題から、職員用の道路を使ったり、職員用駐車場の一部をお客様向けに捻出したような場所もあります。
高速道路利用者は増えない? 一般道への開放が進むワケ
――地域住民の利用は多いのでしょうか?
もちろん、比率としては高速道路を利用されている方が多いですが、「ぷらっとパーク」の存在を周知できているところについては、休日はもちろん、平日昼などでもご利用いただいています。
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NEXCO東日本では2017年8月、常磐道の四倉PA下り(福島県いわき市)を一般道へも開放することに合わせ、上述の「ウォークインゲート」という愛称を制定しました。この四倉PA下り線には2002(平成14)年の開設以来、商業施設がありませんでしたが、「ウォークインゲート」の設置とともに食堂と売店も新設されています。NEXCO東日本によると、「上りのほうがすでに一般道のお客様にも開放されてにぎわっていたことから、下りでも開放しました。ただ、何もなければ『目的地』にはならないこともあり、商業施設も新設しました」といいます。
「SA・PAでは、お客様にその地域を感じていただけるような商品づくり、店づくりを心がけています。それを近隣の方にも見ていただくことで、SA・PAが地域連携の場にもなると考えています」(NEXCO東日本)
四倉PA下り線商業施設のイメージ。右上は「ウォークインゲート」のマーク(画像:NEXCO東日本)。
一方、SA・PAを一般道へも開放することが進む背景には、別の観点もあるようです。中日本エクシスは「高速道路の交通量は、今後増えないと予測されていることからも、地域の方にもっと利用してもらえるよう努力しなくてはなりません」と、危機感をあらわにします。
ちなみに、SA・PAに隣接した高速道路用地外に設置された商業・レクリエーション施設もあります。「ハイウェイオアシス」と呼ばれるこの施設は、高速道路利用者も自由に行き来できるもので、NEXCO中日本管内には8か所開設されています。なかでも伊勢湾道の刈谷PA(愛知県刈谷市)に隣接する刈谷ハイウェイオアシスは遊園地を併設しており、年間900万人以上(綜合ユニコム『レジャーランド&レクパーク総覧2018』)が訪れる人気スポットです。
【写真】一般道向け駐車場60台以上の「ぷらっとパーク」も
新東名高速の清水PA。上下線集約型のPAで、「ぷらっとパーク」として64台の、一般道からの利用に向けた駐車場を備える(国土地理院の空中写真を加工)。