1年5か月で掘削、もう1本もまもなく完了
横浜市内で首都高の新線「横浜環状北西線」約7.1kmの建設が進められています。そのなかで約4kmを占めるトンネル2本(上下それぞれ1本ずつ並行)のうち1本の、シールドマシンによる掘削が完了。2018年9月7日(金)にそのシールドマシンが公開されました。
横浜環状北西線のトンネルを掘削したシールドマシン(2018年9月7日、中島洋平撮影)。
横浜環状北線(以下、北西線)は、東名高速の横浜青葉ICと、第三京浜および首都高K7横浜北線(以下、北線)が接続する横浜港北JCTを結ぶ路線です。2017年2月に開通した北線とつながることで、東名高速と横浜市街地・横浜港方面を直結する新ルートが形成されます。
現在、東名高速と横浜港方面のアクセスは、一般道である国道16号「保土ヶ谷バイパス」経由が主流。東名高速から横浜港の大黒ふ頭までの所要時間は、横浜町田IC~保土ヶ谷バイパス~首都高K3狩場線/湾岸線経由で40~60分のところ、横浜青葉IC~北西線/北線経由で20分に短縮されるといいます。また、たとえば東名から東京都心への移動も、首都高3号渋谷線を経由せずに、第三京浜やK1横羽線、湾岸線へ迂回するといったことも可能になるのです。
今回公開されたシールドマシンは、横浜青葉側から横浜港北側へ2017年3月に発進し、1日最大20mのペースで、約1年5か月をかけて掘り進められました。マシンの直径は12.6m。円形のトンネル断面を上下に区切り、片側2車線の道路が構築されます。道路下の空間は緊急時の避難路です。
このシールドマシンは「泥水式シールド」という方式を採用。掘削した土砂をシールドマシンからパイプで処理プラントに送り、そこで水と土に分離、水は地中に戻し、土はダンプトラックで搬出します。その排土の量は1日でダンプトラック500台ぶん。上下線でシールドマシン2台を同時施工しているため、実際にはその2倍となる1000台ぶんにも及ぶとのこと。
なお、今回公開されたシールドマシンは横浜市からの委託で首都高が施工するものですが、横浜市自身が施工する横浜青葉行きのシールドマシンもすでに3.8kmまで掘り進めており、9月中旬には掘削が完了する予定です。
五輪に「もちろん間に合う」 工事がスムーズに進むワケ
北西線は2020年オリンピック・パラリンピックまでの開通が予定に向け、工事もハイペースで進んでいます。
シールドマシンでトンネルをつくる「シールド工法」では通常、マシン前方の土砂を削り取りながら、堀った部分が崩れてこないように、セグメントとよばれるコンクリートのピースをリング状に組み立ててトンネルの壁を構築していきます。今回はこれに加え、道路の床板に当たる床版(しょうばん)や、各種ケーブルを収める施設まで、シールドマシンによる掘削と同時に施工し、工期を短縮しているとのこと。首都高速道路の担当者によると、掘削と同時にここまで“完成形”をつくっていくのは珍しいといいます。なお、トンネル内の床版もすでに3kmにわたり構築されているそうです。
トンネルの前後にあたる横浜青葉ICおよび横浜港北JCT付近は高架構造で建設されています。こちらは、2018年度内には橋げたの架設もすべて完了する見込みだそうです。路線全体の工事進捗としては現時点で7~8割とのこと。
横浜環状北西線のルート概要(画像:横浜市)。
トンネルに続く高架部。横浜港北JCT方を望む。
建設中の高架橋に掲げられた横断幕。
北西線の事業が開始されたのは2012(平成24)年です。一方、全長約8.2kmと北西線より1.1kmほど長い北線は、2001(平成13)年の事業開始から開通まで16年を要しています(一部の出入口は現在も工事中)。トンネルの長さや立地の違いなどもあり、一概には比較できませんが、北西線建設の順調さがうかがえます。
「構想段階から地域の皆様のご意見を聞き、計画に反映させるPI(パブリック・インボルブメント)を通じて、合意形成がしっかりできたことが大きいです。用地買収などもスムーズに進みました」(横浜市道路局 横浜環状北西線建設課 施行管理担当係長 金子真嗣さん)
北西線の建設にあたっては、事業化からさかのぼること9年前、2003(平成15)年からPIが進められました。横浜市道路局の金子さんによると、まずこの路線が必要かどうかというところから始まり、具体的なルートや構造などを地域住民と話し合ってきたといいます。計画ありきで住民に用地買収を迫るのではなく、住民とともに計画を練ってきたこともあり、その後のプロセスがスムーズに進んでいるようです。
外環道の関越~東名区間など、当初は2020年東京オリンピック・パラリンピックまでの開通を目指していたものの、遅れることが発表されている道路もありますが、金子さんは「もちろん(五輪に)間に合います」と答えました。