「げんこつそば」とも呼ばれる名物「唐揚げそば」
1日に1300個から1500個ほどの鶏の唐揚げが、トッピングや単品で注文される駅の立ち食いそば店があります。JR常磐線の我孫子駅(千葉県我孫子市)に3店舗、天王台駅(同)に1店舗を構える「弥生軒」です。
一見、どこにでもある立ち食いそば店ですが、多くの客が巨大な唐揚げにかぶりついています。トッピングの唐揚げというと、普通は5cmほどのものを想像しますが、ここで提供されている唐揚げは、1個につき「もも肉の半分」、握りこぶしほどの大きさがあります。
これが2個入った「唐揚げそば」を注文すると、唐揚げが丼からこぼれ落ちそうになります。そばを食べたいときは、“ふた”になっている唐揚げが落ちないよう、下から慎重にほじくり出さなくてはなりません。この「唐揚げそば」、鉄道ファンのあいだでは「げんこつそば」とも呼ばれ、弥生軒の名物として知られています。
人気のワケは? タッパー持参もOK?
「唐揚げそば」は、唐揚げが1個だと400円、2個だと540円ですが、“食欲”に応じて1個あたり140円で増量もできます。また、そばなしの唐揚げだけでも注文が可能。店内で食べる場合は、丼に唐揚げとつゆが入った状態で提供され、持ち帰る場合は袋に包んで渡してくれます。
弥生軒の担当者によると、家に持ち帰って食べるのか、まとめ買いする人もいるといい、タッパー(プラスチックの食品保存容器)などの容器を持参すれば、それに入れて渡すこともできるそうです。ただし、毎年6月から9月上旬までの夏場は、唐揚げの持ち帰りは不可といいます。
「唐揚げそば」や唐揚げは、平日の朝は東京方面に向かう出勤途中のサラリーマン、夕方にかけては部活帰りの高校生、夜は飲んだあとのサラリーマンに人気とのこと。食べ盛りの高校生にとっては、「おにぎりより大きい唐揚げのほうが腹持ちが良いのではないか」と、弥生軒の担当者は話します。また週末は、テレビや雑誌などで知った人や鉄道ファンらがわざわざ食べに来るケースもあるといいます。
店は朝から営業していますが、朝は駅の混雑から店舗に搬入できる数が限られるため、唐揚げが品切れになることもあるそうです。ラッシュが落ち着く時間帯になれば、品切れもなくなるとのこと。巨大唐揚げを確実に食べるには、昼前以降が良さそうです。
唐揚げ、なぜここまで巨大に? 社長、そのワケを語る
弥生軒の社長によると、唐揚げは、もとは普通の大きさだったとのこと。しかし大きい唐揚げが評判になったことから、徐々に“巨大化”。いつしか唐揚げ1個の大きさが、現在と同じ「もも肉の半分」になったといいます。そのサイズゆえ、調理は衣の厚さに注意を払い、大きなフライヤーを使って時間をかけて揚げているとのこと。
唐揚げ(単品、トッピングとしての販売も含む)の売り上げは1日あたり1300個から1500個ほどですが、夏は1100個台、冬は1600個台というように季節で“波”があり、その日の天気や気温によっても大きく変動するそうです。
特によく売れるのは「風のない冬の寒い日」で、また25日(給料日)を過ぎた金曜日の夜は店にとって“好条件”。飲み会帰りのサラリーマンらが多く来店し、「唐揚げそば」がよく売れるのだとか。
ちなみにこの弥生軒では、かつて画家の山下 清さんが無名の時代に住み込みで働いていたことがありました。我孫子駅の店には、「ぼくがはたらいていた弥生軒のおそばおいしいよ」と書かれたプレートが掲げられています。