規定の高さを100mmアップ
JR貨物は2018年3月17日(土)のダイヤ改正を機に、「汎用(はんよう)コンテナサイズ」の寸法を変更します。幅と長さはこれまでと同じですが、高さを拡大。背の高いコンテナを運びやすくします。
JR貨物は2018年3月から「汎用コンテナサイズ」の高さを変更。従来より背の高い「20形式」のコンテナが新しい汎用コンテナサイズになる(2013年5月、草町義和撮影)。
「汎用コンテナサイズ」は、どの路線のどのコンテナ車にも載せられるようにJR貨物が決めた、コンテナの規定寸法のことです。現在の汎用コンテナサイズは、高さが2500mm、幅が2450mm、長さが3715mmと定められています。JR貨物が保有するコンテナのうち、19D形や19G形など「19形式」のコンテナが汎用コンテナサイズで製造されています。
3月17日以降の汎用コンテナサイズは、幅と長さが従来と同じ。高さは100mm拡大して2600mmです。これにより容積は0.7~0.8立方メートル増えて19.5立方メートルになります。JR貨物のコンテナでは、20D形や20G形など「20形式」のコンテナが、3月以降の新しい汎用コンテナサイズと一致します。JR貨物は「コンテナに積載できる貨物の容積が拡大するため、より利便性が高まります」としています。
コンテナが大きくなるということは、トンネルや鉄橋なども、それに応じて広げなければならないはず。しかし、貨物列車が走っている路線で、汎用コンテナサイズを拡大するための工事が行われたという話は聞きません。線路の「空間」は何も変わっていないのに、コンテナが大きくなるというのです。
旧型コンテナ車が抱えていた「課題」
今回、JR貨物が汎用コンテナサイズを拡大することにしたのは、同社が30年にわたって進めてきたコンテナ車の置き換えが、ほぼ完了したためです。
国鉄時代に開発されたコキ50000形(2013年5月、草町義和撮影)。
JR貨物がこれまで使ってきたコンテナ車は、おもにコキ50000形とコキ100系の2種類があります。
コキ50000形は、1971(昭和46)年度から1976(昭和51)年度にかけて大量生産されたコンテナ車。汎用コンテナサイズで製造された5tコンテナを最大5個積載できます。
ただ、日本のコンテナ車は原則として、高さが3600mm(コンテナ積載時)に抑えられてきました。コキ50000形は荷台の高さが1100mmですから、積載できるコンテナの高さは3600-1100=2500mm。標準的な国際海上コンテナは高さが2591mmであるため、コキ50000形では運ぶことができないのです。
「低く」して「高く」した新型
こうした課題を解決するために開発されたのが、JR貨物の発足後にデビューしたコキ100系です。1987(昭和62)年に試作車が製造されました。
19D形を載せたコキ50000形(上)と、20D形を載せたコキ100系のイメージ(画像:JR貨物)。
コキ100系は台車の寸法を見直して荷台の高さを1000mmとし、コキ50000形より100mm低くしました。これにより、積載できるコンテナの高さは3600-1000=2600mmに拡大。高さが2591mmの海上コンテナも積載できるようになりました。
JR貨物は1988(昭和63)年からコキ100系の量産を開始。高さが2500mmを超えるコンテナの導入も始まりました。ただ、大量にあるコキ50000形をコキ100系へ一気に置き換えるのは資金的な面などから困難だったため、しばらくはコキ50000形とコキ100系の両方を使い続けるしかありませんでした。
コンテナ車「統一」で制限なしに
こうしたことから、JR貨物はコキ100系のデビュー後も、「19形式」など高さが2500mmのコンテナを汎用コンテナサイズと位置づけてきました。2500mmを超えるコンテナには「コキ50000積載禁止」などの表記を入れ、積載ミスの防止を図っています。
上越線を走る貨物列車。コキ50000形(右)とコキ100系(左)の両方が連結されている(2013年5月、草町義和撮影)。
実際は、コキ50000形に背の高いコンテナを積載しても問題ない高さを確保した路線が多く、そうした路線では「コキ50000積載禁止」と記されたコンテナを積載したコキ50000形が運転されることもありました。とはいえ、コキ50000形に背の高いコンテナを積載できない路線が存在する以上、汎用コンテナサイズを変えることはできなかったのです。
しかし、コキ100系の増備が進んだ結果、コキ50000形は3月のダイヤ改正で定期運転の貨物列車から引退することに。どの路線でも、高さが2500mmを超えるコンテナをコンテナ車に載せることができるようになるわけです。
そこでJR貨物は今回、汎用コンテナサイズの変更を決定。今後は新しい汎用コンテナサイズに適合した「20形式」コンテナの製造を進めていくことにしました。2018年度は20D形を2650個、20G形を1300個、それぞれ製造する予定。これにより「19形式」の更新を順次進めていくとのことです。
【写真】「積載禁止」の表記も消滅か
従来の汎用コンテナサイズより背の高いコンテナには「コキ50000積載禁止」などの表記が入れられているが、こうした表記も消滅することになるのだろうか(2013年5月、草町義和撮影)。