空の上のユニークすぎる「ウェイポイント」
航空機は安全に効率よく飛行するため、上空には飛行機の通り道「航空路」が定められています。飛行機は空港を離陸してからSID(標準計器出発方式)で定められたルートを経て、航空路へと合流します。着陸の時はSTAR(標準到着経路)を経て空港へ着陸します。
羽田空港を離着陸する航空機。離陸から着陸まで、空の上には飛行可能な「通り道」があらかじめ定められている(2016年、石津祐介撮影)。
その際、航空路の分岐点や空域の境界などに「ウェイポイント」と呼ばれる地点が設定されており、管制の指示によって航空機がポイントを通過します。
航空路は「Y20」とか「R220」などアルファベットと数字の組合せで表記され、ウェイポイントは「URAGA」とか「MIURA」のようにアルファベットで表記されます。おおむねウェイポイントは、地域に関するネーミングが多いのですが、そのなかにはとてもユニークな名前があります。
福岡空港周辺に見える「LAGER」「EBISU」「KIRIN」(画像:国土交通省航空局)。
たとえば、関西にある「HONMA」と「KAINA」は、合わせて「ほんまかいな」と関西弁。九州から中国へ向かう海上には「GOMAR」、「AZUKI」、「POTET」、「ONIKU」、「LAMEN」と、食べ物の名前が続いたり、福岡空港周辺には「KIRIN」、「MALTS」、「EBISU」、「LAGAR」とビールに関する名前がそろったりしています。
誰が名付けたウェイポイント?
このようなユニークな名前は、誰が命名しているのでしょうか。航空管制を管轄する国土交通省航空局は「国土交通省航空局の担当(管制課空域調整整備室)が関係する管制機関の航空管制官等と位置や必要性、名称について相談したうえで設定します」と説明します。
「(ウェイポイントの名称は)『アルファベット5文字であること』『近くに同じ名称のウェイポイントがないこと』などICAO(国際民間航空機関)が定めているルールに基づいて決まります」(国土交通省航空局)
確かに「ポテト」はローマ字で「POTETO」ですが、ウェイポイント名は「POTET」となり、ビールの銘柄「YEBISU」は「EBISU」になっています。
飛行経路が掲載された航空地図。西日本上空を網の目のように航空路が設定されていることがわかる(画像:国土交通省航空局)。
ユニークすぎる名前についても理由があり、管制官とパイロット間の意思疎通が円滑かつ確実に行われるための工夫のひとつだといいます。上空には多くの経路が設定されており、同時に非常に多くのウェイポイントが存在するため、地名、名産品や名物の名称など「印象」の要素も考慮して命名しているとか。
「ウェイポイントの名称は、管制官とパイロットの間の音声通信で使用されることも多いため、『発音しやすいこと、聞き取りやすいこと、他と混同(誤解)しにくいこと』などが重要になります」(国土交通省航空局)
航空路が示されている航空管制レーダー画面の一部(訓練で使用するシミュレーター用に作成されたもの)(国土交通省ウェブサイトの掲載画像を加工)。
ネーミングは変更される事もあり、経路の位置が変更になった場合や、珍しい例として外国のパイロットから発音しにくいなどの指摘を受けた場合には、安全の観点から変更することもあるといいます。
新たなポイントが設定されることも
2020年のオリンピック開催に向けて羽田空港の発着枠が増え、新たに都心上空の飛行ルートも採用されるため、それにともない新しい経路も設定されることになります。
「より効率的な交通流とするために経路の位置を変更したり、複線化を図るために経路を増やしたりなど常に見直しを行っております。それにともなってウェイポイントが増えたり減ったりすることがあります。」(国土交通省航空局)
都心上空に新たにウェイポイントが設定されれば、どんなネーミングになるのか気になるところです。
リアルタイムで航空機の飛行状況が分かる「Flight Radar24」。画面中央にウェイポイント「MIKAN」と「KAINA」が見える(画像:フライトレーダー24)。
今では飛行機の機内Wi-Fiが装備され、飛行中でもスマートフォンでアプリを楽しめます。リアルタイムで航空機の飛行状況が分かる「Flight Radar24」などのアプリで、自分が乗っている飛行機のルートを見ることができます。アプリによってはウェイポイントも表示されるので、機内で確かめてみるのも面白いですよ。
【画像】四国上空には猛虎魂
香川徳島県境付近、「RANDY」と「BERTH」というポイント名が。なお、かつて阪神タイガースでプレイしたバースさんは「Randy Bass」と綴る(画像:国土交通省航空局)。