昼食は5日間とも駅弁
日本には北海道、東北、上越、北陸、東海道、山陽、九州新幹線、そしていわゆる「ミニ新幹線」として秋田、山形新幹線がありますが、これら9つの新幹線すべてに乗り、5日間で日本を周遊するというツアーを阪急交通社が企画、参加を募っています。
北陸新幹線の車両イメージ(画像:阪急交通社)。
このツアーはJRの「フルムーン夫婦グリーンパス」を利用するもの。夫婦あわせて88歳以上のふたり1組で申し込みが可能で、全国8つの出発地が設定されています(東京発のツアーのみ夫婦いずれも55歳以上限定)。たとえば東京発の行程は以下のとおりです(2017年8月末現在)。
・1日目
東京駅8時40分発→(秋田新幹線「こまち」普通車指定席)→秋田駅→(奥羽本線特急「つがる」普通車指定席)→新青森駅→(北海道新幹線「はやぶさ」普通車指定席)→新函館北斗駅→(バス)→湯の川温泉18時ころ着(泊)
・2日目
湯の川温泉8時30分ころ発→(バス)→新函館北斗駅→(北海道・東北新幹線「はやぶさ」グリーン車)→仙台駅→(仙山線普通列車)→山形駅→(山形新幹線「つばさ」普通車指定席)→郡山駅→(磐越西線普通列車)→猪苗代駅→(バス)→裏磐梯・猫魔温泉19時30分ころ着(泊)
・3日目
裏磐梯・猫魔温泉8時ころ発→(バス)→猪苗代駅→(磐越西線普通列車)→郡山駅→(東北新幹線「やまびこ」普通車指定席)→大宮駅→(上越新幹線「MAXとき」グリーン車)→新潟駅→(信越本線特急「しらゆき」普通車指定席)→上越妙高駅→(北陸新幹線「はくたか」グリーン車)→金沢駅→(北陸本線特急「しらさぎ」普通車指定席)→加賀温泉駅→(バスまたはタクシー)→山中温泉19時ころ着(泊)
・4日目
山中温泉8時30分ころ発→(バスまたはタクシー)→加賀温泉駅→(北陸本線特急「しらさぎ」普通車指定席)→福井駅→(北陸本線特急「サンダーバード」普通車指定席)→新大阪駅→(山陽新幹線「さくら」普通車指定席)→博多駅→(九州新幹線「さくら」800系、普通車指定席)→鹿児島中央駅→(バス)→指宿温泉19時ころ着(泊)
・5日目
指宿温泉8時30分発→(バス)→鹿児島中央駅→(九州・山陽新幹線「さくら」N700系、普通車指定席)→新大阪駅→(東海道新幹線「ひかり」グリーン車)→東京駅18時10分~19時40分着
日中は列車の乗り継ぎをひたすら繰り返します。宿泊施設までの移動にバスやタクシーは利用するものの、途中の観光などは予定されていません。阪急交通社に話を聞きました。
――ツアーにはどのような特徴があるのでしょうか?
日本にある9つの新幹線すべてに乗車し、全国津々浦々の温泉地に宿泊します。昼食は5日間ともすべて日替わりの駅弁で、ご夫婦で別々のものをご用意いたします。なお、今回のツアーはJR発足30周年を記念し、JR東日本と共同で企画しています。
「新幹線開通でこんなに変わった」を実感できる?
――なぜ途中に観光がないのでしょうか?
「フルムーン夫婦グリーンパス」を利用した類似のツアーは、1997(平成9)年春、秋田新幹線開通を記念した関西からの東北ツアーから行っており、過去には観光も組み込んでいました。
その後、2011(平成23)年の九州新幹線全通、2015(平成27)年の北陸新幹線金沢開業時にも同様に各新幹線を乗り継ぐツアーを企画してきましたが、路線の拡大とともに行程も増えていきました。しかし、たとえば5日間に比べて6日間では参加者が減る傾向が経験的にわかっています。このため、2015年3月の北海道新幹線の開通を記念した東京発着のツアーで、途中の観光を一切廃し全新幹線を5日間で乗り継ぐ形態を打ち出しました。今回はそれを全国発着のツアーとして展開しています。
――どのような客層を見込んでいるのでしょうか?
子育てから手が離れたご夫婦や、退職などの記念に旅行されるお客様を見込んでいます。移り変わる車窓を楽しみながら、普段ご自宅では語られないような思い出話や、これからについてお話しいただく機会になればと考えています。ご夫婦で別々の駅弁を提供するのも、それをシェアしていただくなどして、会話を広げていただければという思いからです。
※ ※ ※
過去のツアー参加者からはどのような声があったのでしょうか。阪急交通社によると、「確かに『観光もしたかった』というご意見もありますが、そもそも観光重視の方は参加されないと思います。旦那様がお楽しみになるものと思っていたところ、奥様からも『これだけ乗ることもないわね』といったお声をいただいています」といいます。参加者は、たとえば生まれ育った場所や、昔旅したところが「新幹線の開通でこんなに変わった」と、思い出話に花が咲くのだそうです。
「ただの移動手段としてではなく、鉄道に『乗ること』を切り口にする旅行商品は、九州新幹線が開通したころから業界全体で増えてきています。背景には飛行機の地方路線の不便さ、貸切バスの車両不足といった問題もあるかと思いますが、車両の違いや駅での停車時間の過ごし方など“鉄道の趣”を旅の要素にする商品を、当社でも積極的に展開しています」(阪急交通社)
なお、旅行代金はひとり15万円です。出発日は2017年10月~12月の特定日で、出発地によりルート、宿泊施設などが異なります。
【図】日本の新幹線は全9路線
ツアーでは北海道から九州まで、全9路線に乗車し周遊する(CraftMAPの地図を加工)。