蓄電池併用の電気式を採用
JR九州は2018年10月5日(金)、新型車両のYC1系ハイブリッド車と821系電車を南福岡車両区の竹下車両派出(福岡市博多区)で報道陣に公開しました。
竹下車両派出で公開されたYC1系と821系(2018年10月5日、草町義和撮影)。
YC1系と821系は、老朽化した普通列車用の車両の置き換えを目的に開発された車両です。YC1系はディーゼルカーが使われている非電化路線向けの車両で、まずは国鉄時代に製造されたキハ66・67系ディーゼルカーの置き換えを目指します。これに対して821系は電化路線向けの電車。国鉄時代から運転されている415系電車の置き換えを図る車両になります。
YC1系は6月に2両(2両×1編成)が搬入されました。「YC」の意味は「やさしくて(Yasasikute)」「ちからもち(Chikaramochi)」。法令上はディーゼルカーですが、JR九州は「蓄電池搭載型ディーゼルエレクトリック」というシステムを採用したハイブリッド車両としています。このタイプの車両を同社が導入するのは初めてです。
従来型のディーゼルカーは、ディーゼルエンジンで発生した動力を変速機や減速機、逆転機を使って車輪に伝達。これに対してYC1系はディーゼルエンジンで発電機を回し、電気をモーターに供給して走ります。
このような方式の車両は「電気式ディーゼルカー」と呼ばれますが、YC1系は蓄電池を併用したハイブリッド車になっているのが特徴です。発電機で発生した電気の一部と、ブレーキをかけた際に発生する電気を床下に搭載した蓄電池に充電。この電気もモーターに供給し、列車を動かす際のアシストに使います。
YC1系の外観。
YC1系の車内。
YC1系のディーゼルエンジンと発電機、蓄電池。
JR九州によると、このシステムの採用で従来のディーゼルカーより省エネ化が図られ、キハ66・67系ディーゼルカーに比べ燃料消費量を約20%低減。二酸化炭素の排出量や騒音も低減できるとしています。
営業運転はいつから?
車体は出入口のドアを片側3か所に設け、客の出入りがスムーズになるようにしました。また、出入口の段差をなくしてバリアフリー化を図っています。座席はロングシートとクロスシートを組み合わせた配置で、クロスシートには大きなテーブルも設けられました。
821系の外観(2018年10月5日、草町義和撮影)。
YC1系と同時に公開された821系も省エネ化を進めた新型の電車です。2月に6両(3両×2編成)が搬入されました。今回公開されたのは2編成のうちの1編成です。
炭化ケイ素(SiC)という新しいタイプの半導体をモーターの制御装置に採用。415系に比べ消費電力量を約70%低減できるといいます。車内の座席はロングシートですが、背もたれが高くなりました。また、ベビーカーを持った客や車椅子の利用客が使えるスペースが1編成につき2か所設けられています。
ちなみに、YC1系と821系は共通の技術や同じ部品を使っている部分が多数あります。たとえば、台車ごとに制御するブレーキシステムを採用。車両と地上施設の状態を監視するシステムも搭載しました。
車内のサービス設備の仕様も一部共通になっていて、座席はひとりあたりの腰掛けの幅を拡大。4か国語対応の案内表示器やダウンライトタイプのLED照明を採用するなどして、サービスの向上を目指しています。車体外側のドアの両脇には、足元のホームを照らすライトが設置されました。
821系の車内。
821系の車体側面。
ドアの両脇には足元を照らすライトが設置された。写真はYC1系のもの。
設計上の最高速度はYC1系が110km/h、821系が120km/h。定員(うち座席)はYC1系が2両で232人(76人)なのに対し、821系が3両で407人(137人)です。JR九州は今回完成したYC1系と821系を使って量産化に向けた試験を実施。2019年度内の営業運転開始を目指すとしています。
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