1両運転タイプと2両編成タイプの2種類
2018年1月16日(火)に落成した、JR東日本の新型ディーゼルカー「GV-E400系」の量産先行車。同社のディーゼルカーでは初めて「電気式」を採用したのが大きな特徴です。
このほど完成したGV-E400系の量産先行車(2018年1月30日、恵 知仁撮影)。
GV-E400系の特徴は、それだけではありません。運用される新潟や秋田の気候条件に応じた設備の導入や、サービスの改善なども図られています。
開発経緯
GV-E400系は、新潟地区と秋田地区の普通列車に導入される新型ディーゼルカーです。この地域の普通列車は、国鉄時代の1979(昭和54)年にデビューしたキハ40系ディーゼルカーが使われており、老朽化によるメンテナンスコストの上昇や、サービス設備の劣化などといった問題を抱えています。
そこでJR東日本は、新潟と秋田で使われているキハ40系を新型車両に置き換えることを計画。まずGV-E400系の量産先行車を導入して性能評価や各種試験を実施し、その結果を反映させた量産車を製造することにしました。
編成の構成
今回完成した量産先行車は3両です。GV-E400形1両(GV-E400 1)とGV-E401形1両(GV-E401 1)、GV-E402形1両(GV-E402 1)が製造されました。
GV-E400形は車体の両側に運転台を設け、1両だけの運転に対応。GV-E401形とGV-E402形は片側だけ運転台を設け、2両でひとつの編成を組みます。トイレはGV-E400形とGV-E401形に設けられています。
GV-E400系はキハ40系の置き換えを目的に計画された。
1両での運転に対応したGV-E400形。車体の両側に運転台を設けている。
2両編成(左)は片側に運転台を設けたGV-E401形とGV-E402形で構成される。
キハ40系の車両では、両側に運転台を設けたキハ40形がGV-E400形に相当。片側に運転台を設けたキハ47形やキハ48形が、GV-E401形とGV-E402形に相当するといえます。
ちょっと小さいステンレス車体に
GV-E400系とキハ40系は、デビューの時期に約40年の開きがあります。技術の進化や時代の変化にあわせ、さまざまな部分が大きく変化しました。
車体・外装
1両の大きさはキハ40系より少し小さく、全長19.5m×全幅2.8m×全高3.64mです。車体はキハ40系が鋼製なのに対し、GV-E400系はステンレス製。片側2か所の出入り口はキハ40系と同様、利用者がボタン操作でドアを開け閉めできる「半自動ドア」になっています。窓ガラスは紫外線カット機能付きの強化ガラスを採用。これによりカーテンを省略しました。
車体はステンレス製。窓下にアクセントが入れられた。
出入り口は半自動ドア。利用者がボタン操作でドアを開け閉めできる。
窓ガラスは紫外線カット機能付きでカーテンを省略。
腐食に強いステンレスのため、車体全体を覆う塗装は施されていません。ただし、運転台は黒くし、窓の下にはアクセントとなる色が入れられました。新潟支社は「長年にわたり沿線の日常を支える公共交通機関として信頼感、安定感を感じていただけるような力強さと、時代が移り変わっても風化しないシンプルさを兼ね備えたデザイン」でまとめたとしています。
寒さ対策や座席の改良も
1両の定員は、1両運転に対応したトイレ付きのGV-E400形が99人。2両編成はトイレ付きのGV-E401形が111人、トイレなしのGV-E402形が121人です。新潟支社によると、キハ40系の定員は1両編成が96人、2両編成が108~128人。若干の増減はありますが、ほぼ同じ人数です。
内装・座席
内装は「お客さまを包み込むことで安心していただける空間」(新潟支社)を目指し、全体を「温かみのあるトキピンクを基調とした、くつろげる色彩」で統一したといいます。車内照明はLEDを採用しました。
また、出入り口と座席の間には大型の袖仕切りを設置。利用者自身がドアボタンを押して扉を開け閉めする半自動機能とあわせ、座席のあるスペースに外気が直接入り込まないようにしています。雪深く寒さ厳しい、新潟地区と秋田地区での運用に対応しました。
扉と座席の間には大型の袖仕切りを設置。
ボックスシートは2人掛けと4人掛けの2種類。座席間隔はキハ40系より広くなった。
座席はロングシートとボックスシート(2人掛けと4人掛け)を組み合わせて配置しています。ボックスシートは座席の間隔をキハ40系より180mm広げ、快適性の向上を図ったといいます。
トイレは電動車椅子での利用に対応している。
優先席付近やフリースペースなどは床の色を変えている。
トイレは電動車椅子に対応し、バリアフリー対策を強化。優先席やフリースペースは床を色分けして「分かりやすいご案内」を目指したといいます。
縮小した電気式の「デメリット」とは?
GV-E400系の最大の特徴は駆動システムです。JR東日本のディーゼルカーとしては、初めて「電気式」を採用しました。
駆動システム・速度
キハ40系を含む従来のディーゼルカーは、エンジンの回転力を液体変速機(トルクコンバーター)と減速機で車輪に伝える「液体式」が一般的でした。これに対してGV-E400系が採用した電気式は、エンジンの回転力で発電機を回し、それにより発生した電気を使ってモーターを動かしています。
電気式は液体式に比べ速度を調節しやすく、スピードアップも図れるといった利点があります。最高運転速度はキハ40系の95km/hに対し、GV-E400系は5km/hアップの100km/hです。スピードアップによる所要時間の短縮が期待できそうです。
その一方、電気式はディーゼルエンジンや発電機だけでなく、モーターなど電車と同じ機器も搭載しなければなりません。液体式に比べ車両が重くなりやすく、線路にかかる負荷が液体式より大きいというデメリットがあります。とくに日本の場合、軟弱な地盤の上にレールが敷かれていて、重い車両に対応していない低規格の路線が多かったため、液体式が普及したという面もあります。
しかし、最近はモーターなど機器の小型化や軽量化の技術が発達したこともあり、液体式との重量の差が縮まってきました。キハ40系の重さは約36~38tですが、GV-E400系は39.7~42.2tで、数t程度の増加に抑えています。デメリットが縮小して電気式のメリットを生かしやすくなったことも、JR東日本が電気式ディーゼルカーの導入に踏み切った理由のひとつといえます。
GV-E400系は電気式。ディーゼルエンジンだけでなく電気を制御する装置など電車と同じ機器類も搭載している。
GV-E400系のうちGV-E402形の重さは39.7t。キハ40系より少し重い程度だ。
このほか、JR東日本の場合は経営面でのメリットもあります。
電気式はエンジンを除けば電車と同じ機器を使っている部分が多く、技術開発や日々のメンテナンス作業を電車と共通化することができます。JR東日本は現在、約1万3000両の鉄道車両を保有。そのうち約1万2000両を電車が占めています。同社が電車の技術開発やメンテナンス作業で培ってきた「経験」を電気式ディーゼルカーでも生かせるため、開発コストや保守コストなどの軽減につながるというわけです。
気になるGV-E400系のスペックは?
新潟支社は、量産先行車を使った性能評価や技術検証を実施。2月から各種試験を始めます。その後、乗務員の運転訓練やメンテナンスの教育訓練が行われる予定です。
今後の予定・運行区間
量産車は量産先行車での試験結果を反映させる形で製造され、まず2019年度までに新潟地区に投入される予定です。新潟地区に導入されるGV-E400系の運用区間は、羽越本線の新津~酒田間、信越本線の新津~新潟間、米坂線の米沢~坂町間、磐越西線の会津若松~新津間です。
GV-E400系の運転室。量産先行車を使った性能評価や試験、訓練を行い、量産車の製造につなげる(2018年1月30日、恵 知仁撮影)。
一方、秋田地区には2020年度の導入が予定されています。新潟地区での運用範囲に加え、津軽線の青森~三厩間、五能線の東能代~川部間、奥羽本線の秋田~東能代間と弘前~青森間でも運転されるようになります。
主要諸元
●編成・形式
1両編成:GV-E400形
2両編成:GV-E401形+GV-E402形
●車体
ステンレス製
●側出入口
片側2扉(半自動機能付き)
●寸法(1両)
全長:19.5m
全幅:2.8m
全高:3.64m
●重量(1両)
GV-E400形:42.2t
GV-E401形:40.3t
GV-E402形:39.7t
●駆動システム
電気式
●定員(1両)
GV-E400形:99人
GV-E401形:111人
GV-E402形:121人
●最高運転速度
100km/h
●製造初年
2018年
参考:キハ40系の主要諸元
●編成・形式
1両編成:キハ40形
2両編成:キハ47形・キハ48形
●車体
鋼製
●側出入口
片側2扉(半自動機能付き)
●寸法(1両)
全長:21.3m
全幅:2.93m
全高:4.05m
●重量(1両)
約36~39t
●駆動システム
液体式
●定員(1両)
1両編成:96人
2両編成:108~128人
●最高運転速度
95km/h
●製造初年
1979年