仲里依紗主演で、新しい切り口で“不倫”を描くドラマ「ホリデイラブ」(テレビ朝日系)。
本作で、男尊女卑の志向を持ち、独占欲が強く妻を所有物だとみなす外資系コンサルタント・井筒渡を演じる中村倫也にインタビューを行った。
嫌われる役を生き切る決意
――とても特徴的なメガネと髪形ですが、ご自身で案を?
メガネは2、30個ほど見せてもらって決めました。でも横長のメタルフレームというイメージは最初から自分の中にありましたね。髪は全体的にかき上げて一箇所だけ垂らすスタイルにこだわるようにしています。
渡は嫁の里奈(松本まりか)に高圧的な態度を取る人ですけど、「コイツ毎朝これをやってんだな」って思うとダサいじゃないですか。
朝起きて、鏡でガーッと髪を上げて、一箇所だけ一生懸命垂らして(クールな声で)「行ってくる」って(笑)。こんな旦那イヤでしょ? 毎朝前髪の一部分だけ「大丈夫かな?」って見る人に嫁が「は~っ!」って溜息をつく感じになるんじゃないかなと思ってニヤニヤしながらこの髪型にしています(笑)。
――渡という役柄についてはどう感じましたか?
ワクワクしました。渡はいろんなものを壊していきつつ、壊れていく役。浮気された被害者ではあるけれども、被害者だと思わせないアクの強さもある。
そういう意味では自在なキャラクターだなと思ったんですよね。里奈や純平(塚本高史)、杏寿(仲里依紗)にプレッシャーをかけていくことで歯車が狂う塩梅や渡の人間としてのパーソナルな部分の出し方など、いろいろやりようがあるし、やりがいもある。
役者のセンスが問われる膨らましがいのある役だなって感じました。
――里奈役の松本さんとの共演はいかがですか?
松本さんとは昔から知っている仲なので、里奈役と聞いたときは「彼女だったら余裕だな」と思いました。
まだまだ探り探りの段階ではありますが、僕たちは嫌われる役を生き切らないときっと誰も得をしないので、一緒に共犯者になれるようにやっていこうと思っています。
無駄なプライドは持たないようにしてる
――渡のような男性はどう思いますか?
分からなくはないですけど、好きではないです。人って鏡だなと思うんですよ。渡は嫁に「お前は」「お前が」と追及していきますけど、その行動の何十%かは絶対、自分で引き金に指を掛けている。
特に恋愛においては基本、僕は男が全部悪いと思っているので。「アンタ嫁ばっかり責めてないで自責の念に駆られなさいよ」って思いますけどね。きっとプライドが高いんだと思います。
無駄なプライドなんていらないのに。
――ご自分はそのプライドを持たないようにしている?
仕事においても基本全て自分の責任だとは思っています。悪いプライドは20代のうちに捨てておかないといけない。
「お前自身もたいしたもんじゃないんだよ」って気付くのが20代な気がするので。その土台がないと仕事でもプライベートでも人と接していくのは難しいですよね。人と関わることで自分が変われないってことですから。
――中村さんはちゃんと20代のうちに気が付けたということですね。
そうですね、多分。具体的なきっかけは忘れましたけど。
「人間なんて両方ダメ」その意識が必要
――恋愛で男性に全て責任があると思うのはどうしてですか?
責任というか…例えば相手に「いっつもリモコン、どこかにやるじゃん!」と思ったとしても、それをどこかにやらせないようにするために何ができるのかを考えないで、ただ「リモコンここに置け!」って言うのは一方的じゃないですか。
リモコンをここに置いてもらうにはどうすればいいのかなって発想を持たずに責めるだけだと、先程言った“何十%かはこっちに否がある”ってことになると思うんです。
それが拡大解釈していくと浮気にもつながる気がする。もちろんそうじゃないパターンも世の中にはあるのかもしれないですけど、そう思っておいた方が健全ですよね。
そうじゃないと「コレしてくれない」「自分ばっかりやってる」って、なっていくじゃないですか。でも所詮、向こうだって同じようなことを思っているんだから。
誰かと向き合っていくには『人間なんて両方ダメなんだから』って意識を持たないと成り立たないんじゃないかなと最近は思っています。
――すごい。なかなかそんな意識を持てないです…。
持てないですか? じゃあ今日から持つのはどうでしょう。まずは自己洗脳をしていきましょうよ。僕、『人は変わらない』という言葉が嫌いなんです。
もちろん変わらないことはあるけど、大概は努力で変えられるって思うんです。
『変わらない』なんて言葉で逃げるなって思う。だからまずは思ったことを行動にうつしてみて、それを癖にすれば変わるだろうなって。まぁ、美学ではありますけどね。
――純平のように一時の流されてしまう男性については?
共感はできますよ。ただそれで実際に動くかどうかは分からないです。ドラマを見ていて、純平はそういうことをして何かを失ったことがなかったんじゃないかなって僕は思いました。
きっと良いヤツだったからそうなったんだろうなって。
気付かなければ、何をしたっていいんです
――中村さんの中で「ここからが浮気」というのはありますか?
俺の中で? 分かんないな…(笑)。一緒にご飯に行くくらいはいいです。「別の人と手をつないでいたよ」みたいに誰かから言われるのは信用しないですね。
俺が「アイツ嫌いだわ~」って思っているヤツと手をつないでたよって言われたら「何をぅ?」って思いますけど(笑)。
でも…極論、バレなきゃなんでもいいですよ! 俺が気付かなかったら何したっていいんです。
だって気付かないんだもん。本当にうまくウソを付いてくれるなら俺が死んだ後に別の人の墓に入ってもいいですよ。俺もう、いねぇし。ただ俺が死ぬまでバラさないでねっていう。
もしバレた場合は…とりあえず確認するんじゃないでしょうか。「何これ? どうなってるの? どうしたいの?」って。
何でもそうですけど、一人でできないものって、片方が別のことをしたらもう片方がいくらしがみついたとしてもどうしようもないじゃないですか。
「で、どうしたいの?」って答え次第でこっちも対応が変わってくると思いますし。
――最後に。ドラマでは妻や視聴者を震え上がらせる渡ですが、中村さん自身が最近怖かったことは?
最近寝付きが悪いからかもしれないですけど、ほぼ毎日金縛りに合うんです。僕は夢に入るタイミングが分かるタイプで、自分の場合は意識がザーッと昔のテレビの砂嵐のような状態になった後に夢が始まる感じ。
でもこのザーッが一歩間違えると、金縛りになっちゃう。疲れているときにそういう風になるのはイヤじゃないですか。「どっかいけボケェ」って思うんですよ(笑)。今はその砂嵐が怖いです。
【撮影=平岩亨】