「胎児の成長は、人間の進化の過程をたどっている」という話を聞いたことがありますか? それはいったいどういうことなのでしょう?
理学博士であり、宇宙創生にかかわる「ゆらぎ」研究の第一人者である佐治晴夫先生のお話を紹介します。
最初は魚のような形をしている
受精卵が細胞分裂を繰り返して着床し、だんだんと胎児らしい形になるまでには、約40日かかります。この間、ボール状の細胞のかたまりは刻一刻と形を変えていきます。
「…受精後約32日目の赤ちゃんはまだ魚の顔で、エラのようなものがみえます。約34日目になると、鼻が口にぬける両生類の姿に、約36日目には原始爬虫類のような形に、約38日目にのどの器官ができ、約40日目に人間の顔立ちになります。つまり、地球が40億年近くかけて行った生物の進化を、人間の赤ちゃんは、発生からわずか40日足らずで駆け抜けてしまうのです。
単純に考えれば、胎内の赤ちゃんの1日は、地球の1億年分に相当することになります」(※)
最初のころはしっぽのようなものもついていて、成長の過程でだんだんと小さくなっていきます。この変化が、人間の先祖の道筋をたどっていることになるなんて、とても神秘的ですよね。
産声(うぶごえ)をあげて、肺呼吸へ切り替え
おなかの中で人間らしい見た目に変化していく赤ちゃんですが、肺呼吸をするのはママのおなかから出てから。
「(中略)生まれた赤ちゃんにとって初めての試練は、“魚”との決別です。大きな声で泣いて、肺の中にたまったたくさんの羊水(ようすい)を吐き出し、肺呼吸に切り替えて、人間に生まれ変わるのです。私たちが、まばたきをするのは、いつも目がぬれていた魚時代の記憶が残っていて、陸では乾いて痛くなってしまう目を涙で潤して、痛みをとるためのしぐさだったのです。」(※)
お産のときに赤ちゃんが「オギャ―」と泣くのは、人間として大きな一歩を踏み出したことになるのですね。そして、40億年前の記憶は、あなたからおなかの中の赤ちゃんへ、そのまた子どもへと、バトンが渡されます。40億年間渡され続けたバトン、さて、どこまで行くのでしょう?
※出典:東急沿線情報誌「SALUS」2017年5月号 佐治晴夫先生連載「宇宙のカケラ」より
壮大なスケールのお話、いかがだったでしょうか。ときには40億年前に思いをはせながら、赤ちゃんと一体の貴重な妊娠期間をじっくり味わってくださいね。(文・たまごクラブ編集部)
■監修/佐治晴夫先生
1935年東京生まれ。理学博士。無からの宇宙創生にかかわる「ゆらぎ」の理論研究で知られる。北海道「丘のまち郷土学館・」天文台台長。大阪音楽大学客員教授。