今月2、5日に紀伊水道を震源とする地震が発生し、香川でも震度2を記録した。南海トラフ地震の想定震源域での発生。気象庁は震源の深さや地震のメカニズムから「南海トラフ地震とは直接の関係はないと思われる」とする。ただ、近年は熊本地震や大阪府北部地震など、西日本を中心に大規模な地震が発生し、紀伊水道を震源とする地震が頻発。専門家は「西日本全体で大地震発生のひっ迫度が確実に高まっているサイン」と指摘、備えを急ぐよう求めている。
■海側プレート内
今回の地震は両日とも震源地は紀伊水道で、震源の深さは約50キロ、規模はマグニチュード(M)5・4と4・6と推定される。
気象庁によると、南海トラフ沿いでは、日本列島が乗る陸側のプレートの下に海側のプレートが年数センチ程度の速さで潜り込んでいる。生じるひずみに耐えられなくなると陸側プレートが一気に跳ね上がり、南海トラフ地震が発生する。
今回の震源地での両プレートの境界の深さは推定約30キロ。このため、「境界のさらに下の海側のプレート内部で発生したとみられる」(気象庁)。同庁の南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会も7日、「発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていない」とした。
■昭和南海時にも
「外堀は埋まりつつあるのではないか」。こう指摘するのは、香川大四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構副機構長の金田義行同大特任教授。今回の地震について「南海トラフ地震の震源域周辺でひずみが確実に蓄積されている影響ではないか」とみる。
さらに、過去の南海トラフ地震の前には「予兆」とも取れる内陸型地震が続発した点も挙げる。昭和の南海地震(1946年)の前には鳥取地震や三河地震などが起きている。近年では、2016年の熊本地震や鳥取県中部地震、今年は島根県西部地震や大阪府北部地震が記憶に新しい。
南海トラフ地震の周期は100~150年。昭和南海から70年以上が経過し、今後30年以内の発生確率は「70~80%」とされる。金田特任教授は「西日本で今後さらに、南海トラフ地震に先行する内陸地震や海域の地震が起こる可能性がある」と警鐘を鳴らす。
■各家庭で備えを
県の想定によると、最大クラスの地震が起きた場合、県内では死者6200人、負傷者1万9千人。家屋被害は全壊3万5千棟、避難者は19万9千人。
県は8月に、家庭でできる対策をまとめたチラシを広報誌と一緒に全戸配布。家具の転倒防止の方法や地震発生時の行動、非常時持ち出し品のチェックリストなどを掲載している。
県危機管理課は「普段生活している場所での安全対策が何より重要。いつ起きてもおかしくないと考えて備えてほしい」とする。