吉野家の赤字は構造的なものである
築地市場の移転にともない、吉野家築地1号店は2018年10月6日、閉店した。暗い話題は続き、吉野家ホールディングスは2018年3~8月期連結決算で最終損益が8億5000万円の赤字となった。19年2月期通期でも、最終損益は11億円の赤字になる見通しだ。
赤字の原因は主に原材料のコスト増と人件費の高騰だ。原材料の米国産牛肉の価格上昇は、すでに大量仕入れなどで安く仕入れている。
後者の人件費も、日本の生産年齢人口が減り続けていく以上、これまでのように安く人を雇うことは不可能だ。そう考えると吉野家の赤字は構造的なものであることがわかる。
この状況を打破するには、これまでのような“おもてなし”サービスは見直し、こだわるべき部分だけにリソースを集中させるしかない。牛丼チェーンの場合、消費者が求めているのは“安くて、早くて、美味しい”ということだろう。それ以外は可能な限り自動化、省力化を進めて、人件費を抑えるべきだ。
持ち帰り商品により力を入れることも1つの策
吉野家の場合は、注文と支払いは店員が対応しているが、まずはこれを券売機にする。メニュー数も牛丼以外のものを減らし、オペレーションをシンプルにして、24時間営業も見直すべきではないか。備え付けの紅ショウガなども、必要な人だけが注文する有料サービスにすることを検討してもいいだろう。
それでも人件費、原材料高が経営を圧迫するようなら、値上げも検討せざるをえない。ただ値上げするのではなく、マクドナルドのようにセット商品や他社とのコラボレーション、キャンペーンなどを使って、消費者が値上げぶんの付加価値を感じられるようにすることが重要だ。
ちなみに19年10月の消費増税で牛丼の値段も上がるが、持ち帰り品には軽減税率が適用される公算が高い。今後は持ち帰り商品により力を入れることも1つの策となるだろう。
[流通アナリスト・コンビニ評論家 渡辺 広明 構成=衣谷 康 写真=iStock.com]