ラジオの使い勝手が飛躍的に向上している。インターネット経由で放送を受信できる「ラジコ」の機能が充実してきたからだ。スマートフォンでも聴けるのでラジオを買い替える必要もない。おかげで昨夏ごろからラジオを聴く頻度が上がった。休日は放送時間に合わせ、家事や食事、運動を行うまで生活に密着している。
ただ、困ったことに春の番組改編で一部の放送時間が変更になった。番組の進行度合いが時計代わりになっていたので、時間の感覚が狂ってしまうのだ。ラジコのタイムフリーという機能が、その懸念を払拭(ふっしょく)した。1週間以内なら聞き逃した番組を再生できる。これなら以前の時間に合わせて聞き返せばいい。エリアフリーという機能もあり、料金を払えば全国ほぼすべての局の番組も聴ける。
少し前はラジオも新聞もネット時代では負け組に数えられていたかと思う。だがラジオは、電波の受信装置こそ廃れつつあるものの、スマホを受信機に新たな道を切り開き、課金システムを確立しつつある。
同じメディアの世界にいて、少しうらやましくも感じる。新聞はネット化にうまく対応できず、試行錯誤が続いている。ラジオを見習って、次の一手を繰り出したいものだ。
日刊工業新聞2017年5月26日
【ファシリテーターのコメント】
数ある情報メディアの中で視覚を唯一必要としないラジオは、仕事中でも耳を傾けられる“ながら”を一つの強みとしてきた。伝送路や端末の多様化、コンテンツ充実などニーズをうまくくみ取れば、再び飛躍できるポテンシャルを持つ。いつも決まった時間にラジオから聞こえる顔も知らないパーソナリティーの声を励みにする人も多いはず。ラジオが持つ特徴と日々加速度的に進化する通信の融合は、我々に新たな楽しみを提供してくれるだろう。
長塚 崇寛