ボディビルダーの食事は、非常に体脂肪の少ない体をもたらします。ですが、一般の人たちが彼らの食事方法を取り入れる際には、大いに注意が必要です。
1977年、アーノルド・シュワルツェネッガーを一躍世界の男にしたドキュメンタリー映画『Pumping Iron(アーノルド・シュワルツェネッガーの鋼鉄の男)』において、シュワルツネッガーはその道の人々の心を鷲づかみにしました。
それからというもの、フィットネス愛好者たちはボディビルディングの世界に魅了され続けています。シュワルツネッガーのような先駆者たちは、ウエイトトレーニングやプロテインを大量に摂る習慣を大衆に広め、その結果、ボディビルディングの世界からフィットネスに関する多くのトレンドが生みだしてきたのです。
このようなことが起こったことは、別に驚くべきことではありません。筋骨隆々で体脂肪の少ない肉体は非常に男性的で、現実世界でのスーパーヒーローを象徴するような魅力的なものだからです。そして、ボディビルディングに関して、多くの人々が学びを得ようしたもののひとつに、その彼ら彼女らの食習慣についてでした。
しかし、ボディビルダーの食習慣を取り入れることに、プラス面ばかりでマイナス面はないのでしょうか? この食習慣によって、逆に太ってしまうようなことはないでしょうか?
実は、“フィットネスはボディビルディングを後追いする”と、「メンズヘルス」の栄養アドバイザーでダイエット書『The Metashred Diet』の著者としても知られるマイク・ラッセル氏は話します。
しかし、ボディビルダーの食習慣には、限定的な効果に留まったり、体重の増加さえもたらす面もあります。「そんなはずはない」と感じるかもしれません。実際、彼らの食習慣が非常に体脂肪率の低い肉体をもたらしたことも確かだからです。では、こういった食習慣が体重増加につながる可能性があるのはなぜでしょうか。
まずは、典型的なボディビルダーの食事がどのようなものかについて知りましょう。
彼らは通常、一定の原則に従って食事をとっていますが、だからといって誰もがまったく同じような食事をしているわけではありません。恐らく最も知られているのは、彼らの食事回数の多さでしょう。
ボディビルダーは筋肉量を増やすために、ジムで何時間もトレーニングをし、何度も食事を摂ります。一般的には、一日6回の食事を摂るといいます。もちろん、彼らはこれらの食事をファストフードで済ませるようなことはありません。
ボディビルダーは毎食タンパク質を摂取し、このうち何度かはプロテインシェイクで摂っています。一回の食事には、鶏胸肉や魚の切り身のグリルなどの脂肪分の少ない動物性タンパク質と野菜、場合によっては、さつまいもや米などのでんぷん質が含まれます。食事脂肪の摂取は厳格に管理されており、調理法は主に「蒸す」、「茹でる」、「直火焼き」などになります。
さて、ここまではわかりました。では、このようなボディビルダーの食事方法が、ジム通いする普通の人をどうして太らせることになってしまうのでしょうか。ここにはいくつかの理由があります。
1日6回の食事―カロリーオーバーになってしまう
フィットネス愛好家以外のほとんどの方は、ジムで何時間もトレーニングをすることはできないでしょう。一般の方がワークアウトにかけられる時間は限られているのです。つまりは単純に、ボディビルダーと同程度にはエネルギーの消費は行われてはいないのです。
このため、1日6回の食事を真似しようとしている方は考え直してください! すぐにカロリーオーバーになってしまうでしょう。各食事の量を調整しなければ、一日の摂取カロリーが消費カロリーを上回り、体重が増えてしまうのです。
つまり、食事の頻度を真似てはいけない
薪をくべると火が燃え続けるように、「食事の頻度を上げれば代謝が活性化される」という考え方は、いつの間にかアメリカのフィットネス愛好家たちの間では一般的になりました。しかし、この考え方を裏付ける科学的な証拠はありません。また、マイク・ラッセル氏もこれを否定しています。
実際、タンパク質を過剰に摂取すると、体にある種の耐性ができてしまいます。短時間に何度も食事を摂った場合、体は食事から摂取したタンパク質を効率的に利用できないのです。ラッセル氏は、BCAAやプロテインシェイクのような液体タンパク質を摂取した後は少なくとも2時間、しっかりした食事をとった後は少なくとも4時間はスパンをおくようアドバイスしています。
炭水化物への敵視―これは倣うべきか?
最初に言っておきますが、炭水化物は決して敵ではありません。ですが、脂肪の少ない体を手に入れたいのなら、その摂取量には常に気を配る必要があります。
改めて言いますが、ボディビルダーは大量のエネルギーを消費しているのです。彼らはトレーニングを行う一般的な人に比べても、必要な炭水化物の量は多いでしょう。ラッセル氏は、でんぷん質の最も多い炭水化物については、ワークアウト後の食事か朝食に取り入れることを推奨しています。それでも結果に満足できない場合には、朝食からでんぷん質の炭水化物を抜くといいでしょう。
体脂肪率の重要性―我々は常に低い状態をキープすべし
鶏胸肉やブロッコリーを、一生食べたいという人はほとんどいないでしょう…。ボディビルダーはとくにですが、時期によって食事は大きく変わるのです。彼らはオフシーズンには筋肉を増やすため多くのカロリーを摂取し、大会が近づいてくれば、メニューを大きく変えて体脂肪を落とします。彼らのようなタフな生活には、かなりの覚悟が必要になります。
そして、私たちの一般の方のほとんどが注意すべきことは増量と減量を繰り返す生活ではなく、一年を通してある程度、体脂肪率の低い状態をキープすることです。それは単純なことです。ボディビルダーたちはまったく異なる目標をもっており、彼らの生活は「10%以下の体脂肪率でステージに上がること」を中心に生活が回っているのです。
しかしながら一般の人たちが筋肉をつけ、余分な体脂肪を燃焼させる上で、ボディビルダーの食事から学べることは確かにありますが…。
タンパク質不足の日常―誰もが大抵足りていない
一般に、大多数の人はタンパク質の摂取量が足りていません。
食後に満腹感を得ながら十分な筋肉をつけるためには、1日に必要な量をとるためには、一食ごとに少なくとも30gのタンパク質を摂った方がいいでしょう。この分量は、体のタンパク質合成機能を適切に働かせると同時に、満腹感を感じるために必要最低限の量なのです。つまり、30gのタンパク質を含む食事を4回とったほうが、タンパク質がそれ以下の食事を6〜8回とるより、満腹感を感じやすいということになります。
食事計画―ボディビルダーの綿密なプランは見習うべき
ボディビルダーは、想像以上に綿密な食事計画を作ります。
「一週間分の食事の作り置きする」というようなものであれ、「間食のお菓子に手を出さないよう、オフィスにプロテインパウダーを常備する」というようなものであれ、ちょっとした計画が違いを生み出します。
彼らが大切にしているのは、シンプルさを保ち、一貫性をもたせることです。マイク・ラッセル氏によれば、「人々は心のなかでは豊富な選択肢を求めるものですが、現実の食事計画についてはシンプルさを求める傾向がある」と言っています。
水分補給――これも忘れがちだけど大切です
ボディビルダーは大量に水を飲みます。これはぜひ見習うべきです。
マイク・ラッセル氏は、彼らが水分を大量に摂る理由の1つについて解説しています。「飲料におけるカロリーは、満腹感を感じさせない。よって、(増量期に)余分なカロリーを摂取するのに容易だから…」と語っています。また研究によれば、食事と一緒に水を摂ることによって、全体のカロリー摂取量を減らせること可能であることがわかっています。
「一日にどのくらいの水分を摂ればいいのか?」について、科学的な指標はありません。が、一般的には、女性でコップ9杯、男性でコップ13杯が推奨されています(これには、お茶やコーヒーなどから摂取する水分も含みます)。
食事の分量――記録することで修正しやすくする
ボディビルダーは計画を立てるだけでなく、その記録を必ずつけています。
食事のことばかり考える必要はありませんが、カロリー摂取量を把握しやすくするためにも、食事の分量には常に気を配るようにしてください。そして記録し、振り返ることに心掛けるといいでしょう。
何を食べるべきか?―その選択もかなり重要度が高い
脂肪分の少ない肉や野菜をメニューの中心に据えることは、脂肪を減らすための素晴らしい戦略です。これらの食材は、直火焼き、または炙り焼きすることで、油で炒めるよりもカロリー摂取量を減らすことができます。また自分がその日、どのくらい活動したかに基づいて、穀類やでんぷん質の多い野菜の摂取量を調整すれば、カロリーオーバーを防げることでしょう。
それでは最後に、ここまでをまとめてみましょう!
あなたがボディビルダーでなければ、教科書通りのボディビルダー向けの食事は、ほとんどの場合、あなたには合っていないでしょう。これはボディビルダーという特定の方向けのライフスタイルに最適化されたもの。なので、あなたの役に立つものではありません。彼らのライフスタイルから食習慣だけを抜き出して、同じ効果を期待することはやめたほうがいいでしょう。
しかし脂肪を落とし、筋肉をつけたいなら、ボディビルダーの食事から摂り入れることができる要素は多いにあるはずです。
※最後までお読みいただきありがとうございました。