ブラッド・ピットは、レッドカーペット上でのファッションが話題を巻き起こすようなタイプの俳優ではありません。彼は、「最先端のスタイルを取り入れたり、ファッションで冒険をする」というよりは、自分にピッタリのタキシードを着用し、パートナーの引き立て役に徹するといったタイプですし、これに対し何の異論もありません。
ですが、映画の中では別の話。
『ファイト・クラブ』から『オーシャンズ11』、『イングロリアス・バスターズ』まで、彼の出演作品ではいずれも脚本家と監督、衣装部が才能を結集させ、ピットの天性のルックスを利用して、メンズスタイルの象徴するシーンの数々を作り上げてきました。
今回は、そんなスタイリングが魅力的なブラピ映画の中から、「エスクァイア」お気に入りの9本を紹介します。
『トゥルー・ロマンス』(1993年)
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』でのブレイクする1年前、ブラピはタランティーノが脚本を書いたクライムコメディ『トゥルー・ロマンス』でチョイ役ながら、印象的な演技を披露しました。
彼が演じたフロイドは、グレイのTシャツにだぶだぶのグレイのトラックパンツ、ミディアム・ロングのヘアにヤギヒゲを生やしており、ソファに寝そべってポテトチップを食べながらマリファナを吸う姿さえクールでした。最近流行りの「スリーズコア(最近のジャスティン・ビーバーなど、どこかだらしなく、みずぼらしさを感じさせるスタイル)」ワナビーたちが夢見るようなスタイルではないでしょうか。
『セブン』(1995年)
ブラピが髪型をテクスチャードクロップにしてから出演した初期の映画であり、「90年代の最もハンサムな俳優」としての地位の確立につながった1本でしょう。
また、ネクタイとサスペンダーという組み合わせは、新人刑事の彼をうまく描いています。ちなみに、こちらのボロボロのレザーコートをまとう彼は、物語の最後には衝撃的な結末を向かえることになります。
『ジョー・ブラックをよろしく』(1998年)
ブラピは『ジョー・ブラックをよろしく』の中で、前年1997年に公開された『タイタニック』で一躍スターになったレオナルド・ディカプリオに負けじと髪を伸ばし、泣かせる映画を作り上げました。
この映画は、彼のキャリアを代表するものとはなりませんでした。が、シャープなタキシードスタイルや90年代のボクシーなテーラリングは際立っていました。
『ファイト・クラブ』(1999年)
ブラピが演じたタイラー・ダーデンは、その腹筋やファッション、ヘアスタイルなどあらゆる点で、その後10年の「クール」を定義する存在となりました。そして世界中の男たちが、彼のようなレザージャケットを買い求めたものです(中には映画のように、実際に殴り合いをするグループを結成した人もいたとかいないとか…)。
この映画でのブラピの体型は、今でも多くの男性の憧れとなっています。また、プリントTシャツもかなり印象的でした。
『スナッチ』(2000年)
世紀の変わり目に公開されたこの映画の中で、ブラピはトレーラーハウスに住む素手ボクサー・ミッキーを演じました。
こんな役柄でも世界一カッコいい男に見せてしまうのが、彼のすごいところ。見事なレイヤードスタイルはシェルパジャケット、ゴールドのアクセサリーというコーディネートから仕立てられ、実にキマっていたのです。
彼のひどい訛りの英語はともかく、スタイリングには皆さん間違いなく気に入ることでしょう。
『オーシャンズ11』(2001年)
見ての通り、当時のサングラスはひどいものです。
ですが、『オーシャンズ11』でのブラピの素晴らしいスーツスタイルからは、現在も衰えない3つのトレンドを学ぶことができます。その3つのトレンドとは、「ピークトラペル」、「パステルカラー使い」、「開襟シャツ」です。
『バベル』(2006年)
『バベル』は、1発の銃弾が多くの人々の人生を変えていく物語です。
とはいっても、そんな感動的なストーリーもブラピのあごひげスタイルの前には、霞んでしまうかもしれません。白髪交じりのダンディなスタイルは、個性を求める多くの男性に影響を与えました。
この10年後に花開いた「あごひげブーム」の先がけとなるスタイルだったかもしれません。
『イングロリアス・バスターズ』(2009年)
ブラピはこの映画の中で、イタリア語訛りがひどく、後ろとサイドを短く刈り上げた髪型が際立つアルド・レイン中尉を演じました。
ナチ嫌いで皮肉屋でもある個性的なキャラクターは、第2次世界大戦さえ愉快に見せてしまったほどです(「ツーブロック」が当時の髪型の定番であったこともわかります)。
『フューリー』(2014年)
戦争に良いところなどあるのでしょうか!? 間違いなく何もありません。
ですが、あえて挙げるなら(軍人にお馴染みの)「刈り上げ部分の位置が高いフェードカット」くらいでしょうか。そんな髪型のブラピが登場する2014年に公開された「フューリー」は、戦争を恐ろしくも異様なほど閉鎖的なものとして描かれています。