2017年10月から、文京区で「こども宅食」がスタートします。これは、貧困に苦しむ子どものいる150世帯(※)の家庭に対して、売れ残りなどの「食品ロス」などを活用し1回につきお米3キロや缶詰、おかし、飲料など、食品バランスを考えた約10キロの食品を届けるもの。活動資金は「ふるさと納税」などを活用し、2017年度は2カ月に1回、翌18年は月1回の配達を行う予定です。
「こども宅食」事業を立ち上げたのは、文京区や認定NPO法人フローレンスなど、官民6団体でつくるコンソーシアム(企業連合)。
文京区といえば、世間一般的には裕福な世帯が住むイメージ。にもかかわらず、なぜ文京区が子どもの貧困問題に取り組むでしょうか。
(※)全国平均所得の半分を下まわる世帯で暮らす、18歳未満の子どもがいる世帯
まわりとの格差から貧困を隠そうとして孤立してしまう
厚生労働省の調査によると日本の子どもの13.9%が貧困状態にあるといわれています。「実は、文京区では児童扶養手当は700世帯、就学援助は約1000世帯が受給しています。一見、裕福な家庭が多い地域のように思われがちですが、実際には援助を必要としている子どもたちがたくさんいます。また、まわりが裕福だからこそ貧困世帯であることを隠そうとしてしまい、孤立しがちです」とは、文京区の成澤廣修区長。たしかに、まわりの世帯と差がありすぎたら、付き合いを控えてしまうかもしれません。
成澤区長といえば、日本の自治体長として初めて育休を取ったことでも有名。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長を務める、認定NPO法人フローレンス代表、駒崎弘樹さんと何度か会い、「イクメン」について話すうちに子どもの貧困問題の話になり、ともに解決しようという考えに至ったとのこと。
この活動に、文京区という自治体が入ることは、とても大きな意味があります。これまで全国で、子どもの貧困対策として「こども食堂」などの活動が行われています。低価格で食事を提供することで、支援が必要な子どもたちにしっかりと食事をしてほしいとの思いからスタートしたものの、実際には必要とする子どもたちに情報が届いていなかったり、自分からは助けを求めにくいといった課題がありました。
「文京区が自治体として活動に参加することで、これをモデルケースとして、官民協働モデルを全国に普及させていきたい」と駒崎さんは語ります。
初期費用は、一般財団法人村上財団の代表理事である村上絢さんが支援。村上さんといえば、過去にママスタでも取り上げた「障害児保育園ヘレン」の建設費用の寄付をしたりと、社会貢献に積極的です。「こども宅食」活動の活動資金については、ふるさと納税を活用して2000万円を目標に支援の募集する予定です。
文京区のふるさと納税で「こども食卓」プロジェクトに全額寄付
ふるさと納税といえば、ついお米や地域の特産品などの返礼品目的で申し込んでしまうことも多いかもしれません。このふるさと納税を文京区に納税すると「こども食卓」プロジェクトに全額寄付されるのです。返礼品はもらえませんが、活動を支持することができるのです。ひとり一人の活動が大きな流れを生み出す第一歩となるかもしれません。
「こども宅食」の申し込み方法
対象となる文京区の児童扶養手当を受給している700世帯、就学援助を受給している1000世帯。区から手紙が郵送され、登録はLINEから行います。LINEだったら忙しいママでもすぐに登録できて便利ですね。
今後の流れとしては、9月にテスト配送を1回行い、その後10月、12月と2カ月に1回の配送。翌年度は月1回の配送を目指すことになります。
活動がスタートしたばかりで、150世帯からスタートします。申し込みの数が多い場合は抽選となりますが、活動回数ともに増やしていく予定です。
「配送は、民間の配送業者に依頼して食品を玄関先まで届けるシステム。また、その際に学習や生活面の相談にのるなどして、支援のインフラを強めて孤立しないようサポートする」(駒崎さん)。文京区でスタートしたケースをモデルとして、活動の輪がほかの区や県にも広がっていくといいですね。
「こども宅食」の取り組みを行う6団体/文京区、認定NPO法人フローレンス、NPO法人キッズドア、一般社団法人RCF、一般財団法人村上財団、認定NPO法人日本ファンドレイジング協会
取材、文・間野 由利子