江戸時代に複数の妖怪・化け物をまとめて描かれた妖怪絵巻というものが今でも残されています。それらの作品は「妖怪尽くし」「百鬼夜行絵巻」というような作品名で多くの作者によって描かれてきました。
紹介する「化け物尽くし絵巻(ばけものつくしえまき)」は中でも謎の多い絵巻として知られています。謎というのも、その絵巻に描かれた妖怪たちが他の作品には見られない妖怪ばかりなんです。さらに作者も不明。年代は江戸時代後期1820年とみられています。
化け物尽くしと名のつく作品には北斎季親による「化物尽絵巻」もそこそこ有名で、この作品もまた謎の多い作品・作者なのですが、今回紹介する絵巻はさらに上を行く謎加減。
まずは描かれた妖怪の中で唯一正体が分かっている妖怪を紹介。
それがこちらの狐火(きつねび)。日本全域に伝わっている、複数の火が点滅しつつ行列をなしながら現れるといわれる怪火です。
化け物尽くし絵巻には12種類の妖怪が描かれていますが、その他の妖怪の正体は不明。類を見ない名称や容姿なんです。
こちらは汐吹という名称がつけられた可愛らしい妖怪。名前からして海に住む妖怪のようですね。
こちらは真平(まつぴら)という妖怪。体型的には犬に近い妖怪。クリンとした目がちょっと間の抜けた印象。
この為何歟(なんじやか)に至っては顔すら描かれていません。黒く太い尻尾を持った妖怪ですが謎が多すぎ。
そのほかの妖怪も名前は付けられているのですが、ほかの作品では見聞きしたことがない妖怪ばかり。
まさに謎多き化け物尽くし絵巻。