殺処分ゼロを目指し、神奈川県動物保護センターから中・大型犬を中心に犬の保護活動を続けている「神奈川ドッグプロテクション(KDP)」の活動を紹介します。
※記載内容はすべて平成28年5月22日時点のものです。
(取材・撮影・文/尾﨑たまき)
一頭でも多くの命を救いたい。ただそれだけを願って保護活動を続けている
神奈川ドッグプロテクション(以下KDP)のシェルターは、横須賀市の住宅地から離れた山あいの、豊かな自然に囲まれた場所にあります。
広大な敷地には犬たちが自由に過ごせる庭があり、ウッドデッキのスペースでは、人なつっこい犬たちがしっぽを振りつつ、甘えさせてくれるスタッフが来るのを待ち構えています。
施設内はのびのびと自由に過ごしている犬がほとんどですが、なかにはリードにつながれた犬の姿も。
「センターから来て間もない犬や、ほかの犬に危害を及ぼすおそれのある犬をつないでいます」と話すのはKDP代表の菊池英隆さん。
一頭でも多くの犬を救いたいと、6年ほど前にKDPを立ち上げ、いちからシェルターを完成させた方です。
菊池さんは、神奈川県動物保護センターへ定期的に足を運び、数頭ずつ犬の引き出し(※センターに収容された動物を、救出・治療・譲渡などを目的として一時的に預かること)を行っています。
この日も3頭の犬をシェルターへ連れて帰りました。3頭ともうれしそうに菊池さんに甘え、ケンカもせず仲よく車に乗り込んでいく姿は、まるで菊池さんとの出会いを予感していたかのようでした。
まだこのセンターで殺処分が定期的に行われていたころ、菊池さんは「今センターに収容されている犬をすべて引き取るので、殺処分しないでほしい」と当時の所長に直談判したこともあったそうです。
以降、殺処分が迫るとセンターから連絡を受け、期限をきられた命を救い続けました。
センターをはじめとしたみんなの努力の積み重ねで、平成26年度、神奈川県動物保護センターは犬の殺処分ゼロを達成。現在も続いています。
犬たちをとりまく悲しい現実から、目をそらさないという決意
KDPの現在の保護頭数は約50頭。犬の散歩やゴハン、掃除などはスタッフの島田佳代子さんとふたりで行っています。
そして、譲渡会などは20名ほどのボランティアスタッフが手伝ってくれています。
多いときは130頭もの犬を保護していたそうで、近所のコンビニすらも買い物に行けないほど、犬のお世話にかかりきりだったとのこと。
菊池さんがこのシェルターを作る前は、葉山の実家でセンターから引き取った保護犬のお世話をしていました。
しかし、実家で保護できる頭数は20頭ほどと限りがありました。
「住宅地だったため、犬の鳴き声などが近所迷惑になるのではないかと、当時は毎日気にしながら散歩していました。数年経ってようやく理想的なこの場所が見つかりました」
そう話す菊池さんは、KDPを立ち上げるにいたった当時の気持ちも語ってくれました。
「保健所やセンターなどで収容された犬たちが殺処分されていることは知っていました。その現実を考えると悲しくなってしまって。自分にできることは何かないだろうかと考えるようになりました」
間もなくして、菊池さんは、犬たちを取りまく悲しい現実から目をそらさないと決意。
殺処分されてしまう犬を救うために仕事も辞め、地元の神奈川県動物保護センターから犬の引き出しを始めたのです。そんな菊池さんが引き出す犬は中・大型犬が多いそうです。
「センターに登録された保護団体は当時からいくつもありましたが、それぞれの団体にも得意分野があります。小型犬を引き出す団体、犬種ごとに引き出す団体など。最後まで残っている犬はミックスの中・大型犬が多いので、そのコ達を連れてきていたら、このような状況になりました」。
たくさんの犬たちに囲まれながら、菊池さんは笑顔で語ってくれました。
※「犬のために何ができるのだろうか」は偶数月の号に掲載しています。