都道府県別の殺処分率ワースト上位になってしまった奈良県。しかしそれには、「猫の幸せ」を願うがゆえの理由が。奈良県宇陀市にある、動物愛護センターを取材しました。
※記載内容はすべて平成29年4月10日時点のものです。
猫の展示法などを工夫し認知度アップを目指すセンター
県民にとって、保護動物がより身近な存在になるよう、センターは5年ほど前から、平日のみだった開放日を、うだ・アニマルパーク(以下、パーク)への来場者数が多い、土日祝日にも拡大しました。さらに、託児ブースだったスペースをリフォーム。「にゃん友ルーム」と名付け、室内飼育のモデルルームをつくり、その中で猫の展示飼育を始めました。
「センターはパークの片隅にあるので、人が集まりにくかったのですが、ガラス張りで外からでも猫が見えるようになったことで、以前より多くの方が足を運んでくれるようになりました」と所長の本岡直樹さん。
にゃん友ルームは、中に入って猫と触れ合うこともできます。「猫が人になれる機会にもなり、より譲渡につながりやすい猫になってくれるのではと期待しています」。
また、動物愛護週間のある9月には、センターが主催となって、毎年「動物愛護フェスティバル」を開催。子供たちにも理解できるよう、ワークショップなどを行って、動物愛護を呼びかけています。
さまざまな工夫を凝らして、集客を図る本岡さんたち。「県民に保護猫の現状を実際目にしてもらうことが、問題解決には欠かせないと思ったのです」と語ります。
回り道だとしても方針を変えずに解決していきたい
センターに取材にうかがったのは2月末で、これから猫の繁殖期に入る頃でした。そこで新たに問題になるのが、譲渡率のアップを一番としない、“効率の悪い”方法を選ぶがゆえに、施設が猫で飽和状態になりやすいこと。
繁殖期を前に、それを懸念したセンターは、昨年末から子猫の飼養ボランティアの募集を開始。乳飲み子猫を一般宅でしばらくお世話してもらおうというのです。
「やはりこの募集にも厳しい基準を設けてはいますが、この試みが成功すれば、収容数の問題も解決に向かいますし、猫は人になれて、より譲渡に適する性格にもなってくれるはずです」(本岡さん)。
「殺処分ゼロ」よりも「不適正飼育ゼロ」を目下の目標にし、つらい決断を下しながらも、適正譲渡に取り組むセンター。
「譲渡した猫に、再びここで会わないようにするためには、この方法は譲れません。地道にがんばっていきたいと思っています」(本岡さん)
出典:「ねこのきもち」2017年6月号『猫のために何ができるのだろうか』