今回は以前訪れた取材先である東京都動物愛護相談センターを15年ぶりに訪れました。
(取材・撮影・文/尾﨑たまき)
動物愛護団体と連携し、犬たちを幸せに導く
近年では東京都に登録された動物愛護団体も数多くあり、団体を通して譲渡されることが増えてきました。
センターではこれらの愛護団体と協力しながら、官民一体となって犬たちの幸せへの道筋をつくっています。
登録団体のひとつに、一般社団法人ランコントレ・ミグノン(以降ミグノンと表記)があります。
ミグノンの収容頭数は常に上限ぎりぎりながらも、代表の友森玲子さんはセンターへほぼ毎週通って犬の引き出し(センターに収容された動物を、救出・治療・譲渡などを目的として一時的に預かること)を実施。
千葉県東金市のシェルターで保護している犬たちも合わせると、現在60頭近くをお世話しています。
「東日本大震災や昨年の熊本地震の際にも現地に足を運び、収容頭数が限界を超えていた現地のセンターから多くの犬猫を引き出し、連れ帰りました」と友森さん。
60頭もの犬のお世話や、日々の仕事をこなすだけでも目が回りそうなほど忙しいはずですが、当のご本人はいたってマイペース。無理なく活動されているのがうかがえます。
「ボランティアスタッフは登録している方で800人ほどいます。それにボランティアを管理してくださる人もいるので、毎日シフト制で散歩やお世話をしに来てくれるんですよ。都合が悪くなればボランティアさん同士で代わってもらったり。とてもありがたいですね」と友森さん。
最近は来年度の動物愛護法の改正に向けて、署名運動にも力を入れているそうです。
併設のトリミングサロンで譲渡犬の魅力をアップ
引き出された犬たちは、ミグノンが運営する複合施設「ミグノンプラン」内のシェルターで一時預かりされます。
おしゃれで清潔な内装のこの施設にはトリミングサロンに動物病院も併設。
定期開催される譲渡会やイベントは、保護動物たちの新しい縁との出会いの場になっています。
この日も友森さんは、ミックスの中型犬を東京都動物愛護相談センターから引き出しました。
とてもフレンドリーで職員さんにも甘えっぱなしのこの犬は3カ月もセンターにいたとのこと。
ミグノンプランに到着すると、1階のトリミングサロンで爪切りやシャンプーを施してもらい、ますますかわいくなりました。
ほかの犬との関係も良好で、きっといい出会いがあるはずとスタッフみんなが思っていた矢先、次の譲渡会ですぐにトライアルが決まりました。
安心して暮らせる場所をやっと見つけたララちゃん
センターからミグノンに引き出されたあと、わずか4日目の譲渡会で藤居幸さん家族と出会ったミックスの中型犬は、ララちゃんと名づけられました。
「初めは別の犬目当てで足を運んだのですが、譲渡会で真っ先に目が合ったのがこのコだったんです。きれいな瞳が印象的で」と藤居さん。
息子のレオンさんになでられながら、ララちゃんは藤居さんのお宅にすっかりなじんだ様子です。
「保護猫を飼っている友達のすすめもあり、いっしょに暮らすなら保護犬にしようと決めていました。まだトイレを失敗したり、吠え続けたりしますが、当初よりずいぶん落ち着きました。頭がいいコなのでこれからわが家にゆっくり慣れていってくれたらと思っています」と話す幸さん。
みんなの愛情を受けて、幸せいっぱいの表情を見せてくれたララちゃんでした。
「人と動物の調和のとれた共生社会」実現のために
27年度、東京都では488頭の犬の収容がありました。そのうち、飼い主のもとに戻された犬が236頭、譲渡された犬は、愛護団体などの協力もあって234頭。そして、殺処分数は24頭でした(前年度からの繰り入れ、翌年度への繰り越しを含む)。
この連載「犬のために何ができるのだろうか」がスタートした2002年、東京都動物愛護相談センターでの殺処分数は1634頭(平成12年度実績)。
比べるとその数がずいぶん減ってきていることがわかります。
飼い主さんがみな最後まで愛情をもって育てる終生飼養ができたなら、犬たちがセンターに収容されることも殺処分もなくなる日がくるかもしれません。
この連載でも引き続き、犬たちのために私たちができることを考え、お伝えしていきたいと思います。
出典:「いぬのきもち」2017年6月号『犬のために何ができるのだろうか』
※記載内容はすべて平成29年2月20日時点のものです。
一般社団法人ランコントレ・ミグノン
http://rencontrer-mignon.org/