第71回カンヌ国際映画祭で、最高賞「パルムドール」に輝いた是枝裕和監督の『万引き家族』が、6月8日公開となった。同賞を受けた日本映画は21年ぶりのこと。先行公開された6月2日、3日の2日間で、動員15.3万人、興収1億9371万円(全国325館326スクリーン)を記録。早くも大ヒット作の予感を見せた。
是枝監督は、『地獄門』(1954年)の衣笠貞之助監督、『影武者』(1980年)の黒澤明監督、『楢山節考』(1983年)・『うなぎ』(1997年)の今村昌平監督に続き、日本人監督としては4人めの「パルムドール」受賞者となる。
そんな是枝監督、じつは早稲田大学基幹理工学部表現工学科の教授を2014年4月から務めている。是枝監督自身も早大第一文学部卒。後輩たちに、いったいどんな授業を行っているのか、学生に聞いてみた。
「是枝さんはいくつか授業を持っているのですが、私が受講しているのは、おもにフィクション映画を制作する授業です。毎週2コマ連続で、期間は1年間。受講する学生は30人程度です」
その授業は、学生の自主性が問われる厳しいものだ。
「2〜3カ月かけて脚本を作り、企画書を作りプレゼンして、投票で選ばれたものを、5〜6人の班に分かれて制作を始めます。機材のレンタル、演者のオーディション、予算管理など、すべて学生が行います」
監督は、学生たちにこうアドバイスするそうだ。
「実際にあった出来事を題材に脚本を書くとき、『このニュースなら違った角度で見てみたら?』と教えてくれるんです。例えば、犯罪の被害者と加害者という立場ではなく、違う立場の人に光を当ててみよう、という具合です。是枝さんは常々、『これは映画を作る授業だけど、映画制作者を養成するためじゃない。映画を作ることに学びがある』と言っています」
もちろん、映画の技術的なことについても、出し惜しみなく教えてくれるという。
「企画書を書くときには、『参考にしてください』と、『誰も知らない』(2004年)の企画書の草稿を配ってくれました。絵コンテが上手く描けないと相談したら、『海街diary』でどんな図を描いていたか詳しく教えてくれるんです」
学生がたくさん寄ってきても、嫌な顔ひとつせずに応じるという是枝監督。「パルムドール」の授業を受けられる学生たちがうらやましい。